『密告はうたう』は市民が感じる疑念を刺激するサスペンス 味わい深い登場人物たちに注目

『密告はうたう』味わい深い登場人物たち

 第3話では、佐々木が何者かに殺害されてしまう。余談だがこの死体がいかにもアキラ100%といった雰囲気で、とことんシリアスなドラマにもかかわらずちょっとクスッとさせられた。それはさておき、佐々木の死に皆口が関わっているのではないかという疑念がわく。刑事が皆口に話を聞く時も追い詰めていくような劇伴が効果的。登場人物は皆ほぼポーカーフェイスで劇伴と光と影のコントラストある画面が人々の謎を深めていく。台所にかかった玉すだれが透明素材で光を通すところまでおそらくビジュアルが考え抜かれているのだろうと感じる。

 同期の北澤(眞島秀和)は佐良に疑問を投げかける。なぜ皆口が職場を追われるのか。これにこそ何か陰謀があるのではないか。こういうことを見逃せないのが佐良ではなかったのかと問い詰められるが何も言えない佐良。そこへ佐良の異動後に捜査一課管理官となった高崎(千葉哲也)が現れ「飼いならされている」「なんのために警察官になった」と挑発する。現在の職場ジンイチとかつての職場の者たちとの間で揺れる佐良。皆口にも警戒され、バディも上司にも気を抜くことができない。警察もので素性を隠して捜査する潜入捜査ものや家族にも本当のことが言えない公安ものなども主人公が孤立無援で奮闘するドラマは数多いが、佐良ほど孤独な仕事もなかなかあるまい。そこが『密告はうたう』の面白さである。

 能馬の「私が関心あるのはただひとつ、警察官の不正です」というセリフが印象的だった。こういう部署があるのだから不正は必ずあるわけで。そこに絶望がある。警察内部を調べていくことで警察の都合で未解決になった事件の存在が浮き彫りになる。新穂が定年まで追い続ける未解決の、駅のホームで起こった殺人事件の被害者はたまたま巻き込まれた一般市民だった。警察とはそういった事件を解決するのが本来の任務ではないのか。

 警察に限ったことでなく、この世にはこういった本当に明らかにしなくてはいけないことが権力の都合で隠蔽されているのだろう。私たち市民が常々感じている疑念を刺激してくれるサスペンスである。願わくばフィクションの世界だけでなく現実でも不正が暴かれてほしいものである。

 第4話では、皆口と宇田の関係性が次第に明らかになってくる。そしてまた新たな気になる人物が浮かび上がってくる。毎回、善人か悪人かは関係なく味わい深い登場人物が出てくるが、第4話では木下ほうかに注目。そしてやっぱりこれまでになくシリアスな池田鉄洋も気になる存在である。

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■放送情報
『連続ドラマW 密告はうたう 警視庁監察ファイル』(全6話)
WOWOWプライム、WOWOW 4K、WOWOWオンデマンドにて、毎週日曜夜10時~最新話放送・配信中。
WOWOWオンデマンドでは放送回をアーカイブ配信中。
出演:松岡昌宏、泉里香、池田鉄洋、三浦誠己、戸塚祥太(A.B.C-Z)、秋元才加、眞島秀和、ブラザートム、松浦祐也、アキラ100%、千葉哲也、甲本雅裕、木下ほうか、木村祐一、鶴見辰吾、仲村トオル
原作:伊兼源太郎『密告はうたう 警視庁監察ファイル』(実業之日本社文庫刊)
監督:内片輝
脚本:鈴木謙一
音楽:大間々昂
企画・プロデュース:武田吉孝、下田淳行
プロデューサー:井口正俊、星野秀樹
制作プロダクション:ツインズジャパン
製作著作:WOWOW
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/mikkoku/

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