松岡昌宏がアイドルオーラ封印 『連続ドラマW 密告はうたう』迫真の演技で新境地を開く

松岡昌宏『密告はうたう』迫真の演技で新境地

 パンデミックが1年半も続く暗い状況だからか、地上波TVでは明るくわかりやすいドラマが主流に。たしかにラブコメディなどは観ていてストレスはないものの、その前後に放送されるニュースの内容と比べるとあまりに現実離れしており、リアルには感じられない。そんな中、WOWOWの「連続ドラマW」で警察という大きな組織の中でもがき苦しむ男の姿を描いたリアリティ抜群のサスペンスがスタートする。

 8月22日に放送・配信がスタートする『連続ドラマW 密告はうたう 警視庁監察ファイル』は、伊兼源太郎による警察ミステリー小説の傑作を松岡昌宏の主演でドラマ化。松岡が演じる佐良正輝は警視庁捜査一課にいた刑事だが、ある事件の捜査中に後輩の斎藤康太(戸塚祥太/A.B.C-Z)を殉職で失い、“ジンイチ”と呼ばれる人事一課監察係に異動となる。ジンイチとは4万人を超える警視庁職員の不正を内偵して突き止める「警察の中の警察」。同僚たちから恐れられ、嫌われてもいる。そんな中、ジンイチ宛に一通の密告文が届く。斎藤の婚約者で佐良の元同僚でもある皆口菜子(泉里香)が、機密情報データを外部に漏らしているというのだ。かつての仲間を洗うことに葛藤を覚えながらも、監察を開始するのだが……。

密告はうたう 完全解剖ファイルI/テーマ編【WOWOW】

 作風としてはダークでハードボイルド。松岡がインタビュー動画の中で「同じ組織の中で疑いを持つというのは、一般社会からすると、ちょっといびつですよね」と語っているとおり、ジンイチは仲間の警察官がその特権を悪用しているのではと疑う、いわば内部スパイだ。佐良は上司である監察官・能馬慶一郎(仲村トオル)やコンビを組む須賀透(池田鉄洋)からは能力を疑われ、かわいがっていた元同僚の皆口の不正を見つけるようプレッシャーをかけられる。同時に、同期の鑑識・北澤勝俊(眞島秀和)からは裏切り者だと冷たい目を向けられる。どこにも心安らげる場所はない。それもこれも、1年前に斎藤が捜査現場で銃撃され殉死し、佐良はそれを防ぐことができなかったから。過去の回想シーンでの佐良は、いかにも有能そうで自信に満ちあふれているが、現在の佐良は自信を失くし暗い目をしている。

 松岡は、そんな佐良のビフォー&アフターを巧みに演じ分ける。回想シーンでの佐良は松岡のイメージどおり、クールで兄貴肌のイケメン刑事だが、現在の佐良は、前髪を下ろし眉間に深いシワを刻んでいる。挫折感と疲労感を漂わせるその表情は、アイドルである彼が様々な経験をして40代半ばになった今だからこそ出せたものかもしれない。リアリティ重視の演技という点では、主演する人気シリーズ『家政婦のミタゾノ』(テレビ朝日系)より、戸田恵梨香の婚約者の医師を演じた『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)の方が近い。しかし、ここまで抑えたトーンの演技は珍しく、また作風へのチューニングが実に的確だ。「ドラマW」初出演にして初主演で新境地を開いたと言っていいのではないだろうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる