阿部サダヲ、長澤まさみらの共演で話題 野田秀樹『THE BEE』再演の注目ポイントを解説
劇作家・演出家の野田秀樹率いるNODA・MAPの戯曲『THE BEE』が今秋、9年ぶりに日本で再演されることが決定した。
2006年に英ロンドンで初演された本作は、2001年のアメリカ同時多発テロに衝撃を受けた野田が書き下ろした約75分の4人芝居による作品で、脱獄囚に妻子を人質に取られた男・井戸に降りかかる運命を描く。日本公演は2012年のジャパンツアー以来9年ぶりということもあり、大きな話題を呼んでいる。
ドラマ・演劇・ミュージカルに造詣深いライターの上村由紀子氏は、今回の『THE BEE』の日本での再演について次のように語る。
「前回の公演では野田秀樹さんご自身が演出に加え、出演もしていたのですが、今回は演出に専念し、野田さんが演じた井戸を阿部サダヲさん、宮沢りえさんが演じていた井戸の妻ほかを長澤まさみさんが担います。野田秀樹さんの“野田地図”作品は中規模劇場での上演がほとんどですが、今回は俳優さんの汗まで見えるような濃密な劇場での公演。貴重な機会ですし、チケットを取るのも大変でしょうね」
『THE BEE』はどのような作品なのだろうか。上村氏は野田作品の魅力とあわせて本作ならではの特徴を以下のように解説した。
「原作が筒井康隆さんの短編小説『毟りあい』ということもあり、社会の不条理を訴えるメッセージが込められています。野田さんの作品は随所に伏線が張られ、セリフ構成もその伏線に沿って計算され尽くされているので、最初は答えを知ろうと“左脳”で観ているのですが、ある瞬間、それがスパっと“右脳”に切り替わるんですよ。それで、自分でもワケがわからないうちに涙が流れている……なんてことも多いです。論理的な訴求力と感情に訴える力を同時に成立させている演劇というのでしょうか。そんな野田作品の中でも『THE BEE』は特に俳優の能力が舞台上であらわになる作品。豪華な舞台装置や衣装に頼るのでなく、4人の俳優の演技だけで戯曲の世界観を表現します。とはいえ、決して難解な演劇ではないので、目の前で起きていることをただ受け取り、それを感じれば十分に楽しめると思います。原作を鑑賞前後に読んで、その違いを知るのもいいかもしれません」