“普通の人”を演じさせれば天下一品 重岡大毅が醸し出す悲哀とおかしみ

重岡大毅が醸し出す悲哀とおかしみ

「ママは死んじゃった。もう会えない。寂しいよな。パパも寂しい。陽(はる)、寂しいときはね、一緒に……一緒に泣こう」

 文字に起こしてみればあまりにもド直球すぎて、ともすればクサくなってしまいそうな台詞なのに、重岡大毅がこれを発すると、なんとも切実に迫ってくるから不思議だ。

 シェアハウスで暮らす複数のシングルファミリーから成る“疑似家族”の心の交わりを描くドラマ、『#家族募集します』(TBS系)。その主人公・赤城俊平を演じる重岡の醸し出す、シングルファザーのリアリティと吸引力が素晴らしい。「片親の子育ての悩み」という今日的なトピックに切り込んでいながらも、同じ立場の者どうし「片寄せあって助け合えばいい」という昔の「長屋物語」的ファンタジーで、下手すれば「絵空事」「夢物語」と切り捨てられてしまいそうな題材だ。

 しかし重岡の、いい意味での「普通っぽさ」が、俊平の姿に説得力と、ドラマ全体に不思議な共感力をもたらしている。事故で最愛の妻・みどり(山本美月)に先立たれた悲しみを胸に抱えながら、俊平が悩み、迷いながらも息子の陽(佐藤遙灯)とまっすぐに向き合い、幸せを見つけていく姿に胸を打たれる。本当にこんな人、どこかにいそうだなと思わせてくれる。

 アイドルグループ・ジャニーズWESTの一員として活動しているときの重岡は実にアイドル然としていて、全力キラッキラの笑顔でファンの求めに応える姿が印象的だ。転じて、ドラマや映画で演じる役柄はいたって「普通の人」が多い。このギャップが見事であり、実は「普通の人」を演じるのがいちばん難しいのではないだろうか。今や「普通の人を演じさせれば天下一品」という絶大な信頼感を築き上げた俳優・重岡大毅のキャリアを、いくつかの出演作品とともに振り返ってみたい。

 まず最初に彼の存在を全国に知らしめたのは、ジャニーズWESTのCDデビューと同年の2014年に放送された宮藤官九郎脚本ドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)だろう。本来“イケメン”として扱われて然るべきジャニーズアイドル。それなのに、くっきりした目鼻立ち、佇まい、オーラ、全部ひっくるめて「からくり人形」という一言(※重岡が演じた海老沢のあだ名)でバッサリいかれてしまう。こうした“クドカン組”の洗礼を早々に受けたことも、その後の重岡の役者道に大きな影響を与えたと言えそうだ。

 去る8月7日に放送された『人生最高レストラン』(TBS系)に重岡がトークゲストとして出演した際、俳優として最初に「こてんぱんにやられた」作品として『ごめんね青春!』を挙げている。加えて、主演を務めたジャニーズ事務所の先輩(当時)の錦戸亮からは「カッコつけんな。ええ風に映ろうとすんな」と諌められたと述懐した。重岡が「カッコつけること」を捨てて演じた、ヘタレで煮え切らない海老沢ゆずるは「からくり人形」のあだ名とともに、確実に爪痕を残した。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる