松岡昌宏の孤軍奮闘ぶりが加速する 『連続ドラマW 密告はうたう』混沌たる事件の真相
“ジンイチ”こと警視庁人事一課。普段の生活ではもちろんのこと、刑事ドラマでもほとんど耳にすることのないこの課の仕事は、警察内部の規律を保つために警察官を疑い、見張り、時には告発すること。“警察の中の警察”とも称され、当然のように警察官の間では恐れられ、そしてまた毛嫌いされる役回りである。現在毎週日曜夜10時より放送されている『連続ドラマW 密告はうたう 警視庁監察ファイル』は、“ジンイチ”に所属する警察官を主人公にした物語だ。
伊兼源太郎の同名小説を原作にした本作。『連続ドラマW 殺人分析班』シリーズや『連続ドラマW 孤高のメス』を手掛けた内片輝が監督を務めるとあれば、WOWOWオリジナルドラマを見慣れた視聴者にとってはかなり硬派な作品に仕上がっていることを容易にイメージできることだろう。その予想を微塵も裏切ることなく、いわゆる刑事ドラマとは一線を画し、突き抜けて渋い空気が全編に漂いつづけ緊張感がまったく解けない。とりわけ警察組織という限定された範囲を徹底的に掘り進めていくうちに明らかにされる未解決事件の真相と、重層的に絡み合う人間模様、3つの時間軸によって生じる登場人物たちの感情の変化が、この物語のミステリーとしての効果を一層高めていることは言うまでもないだろう。
第2話まで放送されているが、物語は序盤。WOWOWオンデマンドではアーカイブ配信もされておりまだまだ追いつける。そこで、まずはここまでの物語を整理しながら振り返ってみよう。すべては“ジンイチ”に届けられた1通の密告文から始まる。2年前に起きた殺人事件の捜査中に、後輩刑事の斎藤康太(戸塚祥太)を殉職で失い、捜査一課から“ジンイチ”へと異動になった佐良正輝(松岡昌宏)は、同僚から裏切り者と敵視されながら孤独に業務をこなす日々を送っていた。ある時彼は、斎藤の婚約者であり、かつて捜査一課時代の同僚だった皆口菜子(泉里香)が不正に情報を漏洩しているという密告を受け、“コウカク”(=行動確認)を開始するのである。
かつての仲間をコウカクするという冷酷な使命に葛藤を抱きながらも、監察官の能馬慶一郎(仲村トオル)に命じられるがまま、係長の須賀透(池田鉄洋)と共に皆口へのコウカクを遂行していく佐良。第1話ではそうした現在の物語と並行して、2年前に斎藤が殉職した事件の前後の回想が展開。第2話ではコウカクのなかで斎藤が懇意にしていた情報屋の佐々木(アキラ100%)と皆口が接触していることを掴む佐良。さらにそこに捜査一課時代の先輩である宇田(三浦誠己)の関与と、皆口が5年前に目白駅のホーム上で起きた未解決の刺殺事件を追い続けていることが明らかにされるのだ。