杉咲花×市川染五郎、コンプレックスの解消法は? 「挑戦することが大事」
劇場オリジナルアニメーション『サイダーのように言葉が湧き上がる』が全国公開中だ。本作では、人とのコミュニケーションが苦手な俳句好きの少年・チェリーと、コンプレックスの出っ歯をマスクでいつも隠す少女・スマイルの、何の変哲もない郊外のショッビングモールでの出会いと青春が描かれる。
リアルサウンド映画部では、初映画、初主演、声優初挑戦となった主人公チェリー役の八代目市川染五郎と、ヒロインのスマイルを演じた杉咲花にインタビュー。あらゆるジャンルで活躍する2人に、声の演技の難しさや自身のコンプレックス、作品に込めた思いまで話を聞いた(※取材は2020年3月実施)。
それぞれの活動が声の演技に活きた?
ーー『サイダーのように言葉が湧き上がる』は、17歳の男女の青春を切り取った作品ですが、それぞれ本作のような青春の経験はありますか?
市川染五郎(以下、染五郎):自分は青春の経験がないので、自身の体験を活かしながら演じることはできませんでしたが、観てくださる方に共感できる部分があれば嬉しいです。
杉咲花(以下、杉咲):わたしも、こんなに甘酸っぱい時間はなかなか過ごすことができなかったです(笑)。でも、自分がスマイルとして、チェリーとの時間を楽しめたらいいなと思っていたので、その場で出てきた感情を大切にできたらいいなと思っていました。
ーー収録はみなさんが同じスタジオで行ったそうですね(2019年2月にアフレコ収録実施)。
染五郎:自分としてはみなさん一緒に録音する方がやりやすかったです。よりナチュラルな会話の芝居ができたと思います。
杉咲:私もそうですね。誰もいないところで自分一人で想像しながら録音するのと、共演者の方々と録音するのとでは、全然違いました。一緒に心拍数が上がっていく感じがするんです。
ーー染五郎さんは普段、歌舞伎役者として活躍されています。そのときの経験が本作で活きることはありましたか?
染五郎:歌舞伎と本作の声の演技では、基本は全然違うんですが、以前、新作歌舞伎に出たことがあって。三谷幸喜さんが脚本で、セリフが現代語だったので、そのときに現代風のお芝居を経験したことが、本作でかなり活きたと思います。
ーー新作歌舞伎と伝統的な歌舞伎は、やはり違うものなのでしょうか?
染五郎:セリフの違いが大きいですね。古典の歌舞伎の場合は、セリフ回しが自然な会話というより歌に近いんです。本作は俳句がテーマですが、歌舞伎のセリフは七五調で、韻を踏みながら歌のように言う場合があるので、そこは俳句と繋がる部分かもしれません。
ーー杉咲さんも、ゴッホ展のナレーションや、ラジオのパーソナリティーなど声のお仕事が多いです。
杉咲:ゴッホ展のナレーションのときは役を演じるというわけではなかったので、言葉の伝え方や声の緩急をとくに意識していました。今回は、言い方を意識するというより、ちゃんとスマイルとして自分の心が動くようにお芝居をしている感覚でした。
ーー声だけの演技と全身で演技するのとでは、感覚も違いますか?
杉咲:走るシーンで走ったりしたよね。
染五郎:そうですね。足音が入らないようにだけ気をつけながら(笑)。自然と動きが出ちゃうことはありますね。そのときはそれくらい気持ちが入っているということだと思うので、すごくいいことだと考えています。