『おかえりモネ』今田美桜の同志としての存在感 過去の朝ドラ“ライバル”役とは違う?

今田美桜の“同志”としての存在感

 『おかえりモネ』(NHK総合)の主人公・百音(清原果耶)は、気象キャスターの朝岡(西島秀俊)に初めて会ったとき、“耳”の良さを発揮していた。

 朝岡を森林セラピーで案内した際、百音は遠く離れたカフェの話し声に反応。百音の反応から、低気圧が接近して上空の温度が高くなるため「雨が降るかもしれない」と天気を予測した朝岡。百音はその姿に素直に感激したのだった。その後も、森林組合に体験学習で訪れていた小学生と山に入った百音が、雷雨に襲われたときに朝岡の指示で助かることがあった。風向きが変わると風の音が変わる。風の音を聞いて移動するようアドバイスを受けて百音は、音を見事に聞き分け難を免れている。

 気象予報士として自然の音を聞き分ける能力が今後も百音の将来に役立つに違いない。しして、百音の場合は、聞き分ける力があるだけでなく、相手が放つ言葉を受け止める能力も高い。相手の言葉を反芻し、良くも悪くも自分の中で意味を深く受け止めるタイプなのだ。

 何事も真面目に受け止めてしまう百音が言葉選びにも慎重な分、今田美桜演じる人気気象予報士・神野マリアンナ莉子の存在が際立つ。華やかな雰囲気を纏い、率直で歯切れよい物言いが小気味よく、独特の魅力を放っている。

 第12週「あなたのおけげで」では、誰かの役に立ちたくて気象予報士になった百音が、台風情報を伝えて地元の大きな被害を防げたことで「百音のおかげでみんな助かった」という祖父からの言葉を噛み締めた。「やっとみんなの役に立てた」という喜びと、地元に被害が出なかった安心感に包まれる百音に、「なんかさ、永浦さんってちょっと重いよね」と、軽やかに言う莉子の言葉が刺さる。

「人の役に立ちたいとかって、結局自分のためなんじゃん?」
「あぁ、いやごめんね。別に永浦さんを否定しているとかじゃないよ? ただ私は、自分が人に認められたいとか、有名になりたいとか、そういう欲求の方がシンプルだし、嘘がないって気がするだけ」

 正直に語るだけでなく、思った以上に深刻に受け止める百音に対して莉子は、すかさずフォローもできる。悪意があるわけでも、百音を悩ませるつもりもないのだ。

 莉子は小さい頃から報道キャスターになりたくて、気象予報士になったのはそのチャンスを掴むためだという。本名にミドルネームの“マリアンナ”を付けているのも、顔と名前を覚えてもらうためで、テレビ局の気象班デスク・高村沙都子(高岡早紀)とも良好な関係を築いている。コミュニケーション能力が高く、目指す方向がハッキリしているのが莉子。

 一方、百音は震災後「自分は何もできなかった」という無力感と後ろめたい気持ちから抜け出せないときに気象予報士という仕事を知る。そして、「誰かの役に立ちたい」と菅波(坂口健太郎)に勉強を教わって気象予報士になった。同年代で同じ会社に就職して、気象予報士として報道に携わる仕事をしている。これで莉子が後から入ってきた百音に対抗心を燃やし、きつく当たることがあればライバル同士に見えるが、莉子は最初から百音をライバルとして見ていない。自分の野心を隠さないし本音も語るが、あくまでも対等な立場で仕事をしている意識があるようだ。

 気象予報士は、あくまでもチャンスを掴むための足がかり。上昇志向が強くドライな莉子は、人の足を引っ張る行動で自分の価値を下げたりもしない。

 朝ドラといえばヒロインの成長の物語が多く描かれることもあり、そのライバル役にも注目が集まってきた。『エール』(2020年前期)では、音(二階堂ふみ)のライバルとなる夏目千鶴子役の小南満佑子の存在も目立っていた。音の同級生で音楽学校の創立記念日に開かれる記念公演の選考会で音と主役を争った彼女。ソロリサイタルを開催するほど実力があり、ストイックに声楽の道を進む千鶴子には近寄りがたい雰囲気で音を圧倒していた。

 音は、英国の作曲コンクールに入賞した裕一(窪田正孝)に憧れ、手紙を出したことがきっかけで文通が始まり、やがて結婚。歌手になる夢を叶えるため、音楽学校に入学して声楽を学ぶものの、出産のため舞台を断念せざるを得なくなる。人生の岐路に立ったヒロインの、選ばなかったもう一つの道を暗示するのがライバルの存在であり、千鶴子は歌手としても女性としても成長し、音と再会を果たしたのだった。



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