コロナ禍に差した一筋の光 『アメリカン・ユートピア』興収1億円突破

『アメリカン・ユートピア』コロナ禍の光に

 先週末の動員ランキングは、『竜とそばかすの姫』が土日2日間で動員35万3000人、興収5億2300万円をあげて2週連続1位。7月25日までの公開から10日間の興収は24億3741万1900円。これは最終興収58.5億円を記録した6年前の『バケモノの子』の同期間の興収約19億円(当時は土曜日公開なので9日間)を大きく上回る数字で、細田作品最大のヒットとなる可能性がますます濃厚となってきた。

 先週のコラム(『竜とそばかすの姫』、細田作品最高の大ヒットスタート 夏休みは映画に行こう!)でも述べたように、東京オリンピック(期間中テレビ視聴を避けているのでよくわからないが、そこそこ盛り上がっているのだろうか)の開催時期と重なることを避けたのか、夏休み中にもかかわらずそこまで強い作品の封切りがなく、『竜とそばかすの姫』の独走はしばらく続きそうだ。本来ならば『竜とそばかすの姫』とトップを競うはずだった、ディズニー配給の『ブラック・ウィドウ』や『ジャングル・クルーズ』が引き続き国内メジャー配給会社系列のシネコンから弾き出されていることもあって、正直なところ興行分析の興がかなり削がれてしまっているが。

 しかし、そんなどんよりとした映画興行の現状にあっても、たまには良いニュースもある。都内がまだ緊急事態宣言下にあった(え? 今もそうだっけ?)5月28日に公開された、スパイク・リー監督がデヴィッド・バーンのステージ・パフォーマンスを撮った『アメリカン・ユートピア』が7月27日に興収1億円を突破した。1億円というと大したことがないと思われるかもしれないが、基本的にはライブを収めただけの音楽ドキュメンタリー作品で、22スクリーンでのスタート、コロナ禍及び出たり引っ込んだりの緊急事態宣言のせいで本来の興行的ポテンシャルを発揮できていない作品が続出していることなどをふまえると、これは間違いなく快挙。公開から60日を超えた現在も、公開時とほぼ同規模のスクリーン数を維持してロングラン・ヒットを続けている。

 宣伝会社が発表したプレスリリースによると「『ストップ・メイキング・センス』やトーキング・ヘッズをリアルタイムで知っている昔からのファンだけでなく、映画好き、カルチャー好きの20〜30代の若いお客さんや、コロナ禍でライヴ体験を求めていたお客様などが劇場に詰めかけています。この見たこともない素晴らしいブロードウェイのショーを子供と楽しもうと家族で来場するお客さんも多く、老若男女がこの体験を楽しもうと映画館に足を運んでいます」とのこと。カルチャーの持つ本来の力や多様性の意味をなめきっているとしか思えなかった東京オリンピックの開会式を目にしてしまった後だと、『アメリカン・ユートピア』の中で歌われ、語られている「理想」がなおさら尊いものに思えてくる。東京オリンピック、そしていつまで続くのかますますわからなくなってきたコロナ禍を通過した後の日本のカルチャーを巡る状況を想像すると、ついつい悲観したくもなるが、このような作品を支持する人々が何万人もいるならきっとまだ希望はある。

■公開情報
『アメリカン・ユートピア』
全国公開中
監督:スパイク・リー
製作:デヴィッド・バーン、スパイク・リー
出演ミュージシャン:デヴィッド・バーン、ジャクリーン・アセヴェド、グスタヴォ・ディ・ダルヴァ、ダニエル・フリードマン、クリス・ジャルモ、ティム・ケイパー、テンダイ・クンバ、カール・マンスフィールド、マウロ・レフォスコ、ステファン・サンフアン、アンジー・スワン、ボビー・ウーテン・3世
配給:パルコ ユニバーサル映画
2020年/アメリカ/英語/カラー/ビスタ/5.1ch/107分/原題:David Byrne’s American Utopia/字幕監修:ピーター・バラカン
(c)2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:americanutopia-jpn.com



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