スパイク・リーと共作 デヴィッド・バーンが語る『アメリカン・ユートピア』の皮肉と希望

D・バーンが語る、スパイク・リーとの共作

 1970年代のNYパンク・シーンにトーキング・ヘッズのフロントマンとして登場して以来、デヴィッド・バーンは唯一無二の存在だ。独創的なアイデアに挑み、音楽、映画、写真、執筆など、様々なアプローチで作品を発表してきた。そんななか、久しぶりの映画『アメリカン・ユートピア』は、彼が2019年にブロードウェイで行った同名のショウを映画化したもの。と聞くと、同じようにライブを映画化した『ストップ・メイキング・センス』(1984年)を思い出す。『ストップ・メイキング・センス』で監督を務めたのは、後に『羊たちの沈黙』でアカデミー賞を受賞するジョナサン・デミだったが、今作でバーンが監督に指名したのはスパイク・リー(『ドゥ・ザ・ライト・シング』『ブラック・クランズマン』など)だ。

 トーキング・ヘッズが「生涯業績賞」を受賞した第63回グラミー賞。その授賞式明けの3月17日に、バーンへのリモートインタビューが実現。映画について話を訊くことができた。まずはスパイク・リーの起用について。意外な抜擢のようにも思えるが、2人は80年代から親交があったらしい。

「スパイクと僕は同じ頃に世間に知られるようになったこともあって、時々会ったりしてたんだ。それで『これを映画にしようと思っているんだけど観てほしい』と、スパイクをショウに誘った。彼ならショウのテーマをわかってくれると思ってね。そしたら彼は2回観にきて、すごく気に入ってくれたんだ。彼ならきっと僕がやろうとしていることをわかってくれると思っていたよ」

 『アメリカン・ユートピア』は通常のロック・コンサートとは違って様々な趣向が凝らされている。バーンは2人のダンサーを引き連れて登場して、歌うだけではなく『ストップ・メイキング・センス』を思わせるダンスも披露。さらに9人編成のバンドは楽器にコードをつけず、自由に動き回ることができる。バンドがステージを様々なフォーメーションで動く様子はミュージカルのようでもあり、時にはパフォーマンス・アートのようにも見える。そんな彼らのダイナミックな動きを、スパイクはバークレイ・ショット(ハリウッドのミュージカル映画で使われる俯瞰のショット)を織り交ぜながら、見事なカメラワークで撮影。バンドが生み出す力強いグルーヴを映像に捉えている。

「スパイクと撮影監督のエレン・クラスが何度も舞台を観にきて、このショウの内容を完全に理解したうえでカメラワークを考えてくれたんだ。すべての曲、すべての瞬間に対して、彼らはしっかりプランを練っていた。彼らのやり方を完全に信頼してたよ」

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