『ザ・ウォッチャーズ』に感じるアンバランスさの正体とは 隠された本質部分を考察

『ザ・ウォッチャー』の本質を考察

 アメリカ映画界でヒットメイカーとして知られる、M・ナイト・シャマラン監督。その娘で、現在20代半ばのイシャナ・ナイト・シャマランが、M・ナイト・シャマラン製作のもと、長編監督としてデビューを果たした。そんな彼女の第1作『ザ・ウォッチャーズ』は、やはり「シャマラン映画」と言うべきか、謎めいた内容と先の見えない展開で観客を翻弄するスリラー作品となった。

 そう、確かにこの作品は娯楽要素が強い。しかし、その内容には、それだけでは終わらない印象と、観客を戸惑わせる一種のアンバランスさをも感じられるのである。ここでは、できるだけネタバレを避けながら、本作『ザ・ウォッチャーズ』に隠されていると考えられる本質部分を探っていきたい。

 本作は、アイルランドのホラー作家、A・M・シャインの同名小説を基に、奇妙なルールに支配された謎の森と、そこに迷い込んでしまった者たちの恐怖のサバイバルを描いていく。ダコタ・ファニングが演じる、アーティストとして活動する28歳のミナもまた、そんな恐ろしい森へと誘われてしまうのだ。

 助けが必要な状態へと陥ったミナは、同じように森で立ち往生している数名の人々に出会うことになる。その人物たちは、夜間は森の中に存在するガラス張りの部屋に逃げ込み、外から“人間ではない”何者かに、一方的に“見られる”ことで生きのび、「監視者に背を向けてはいけない」、「決してドアを開けてはいけない」、「常に光の中にいろ」などのルールを守っていた。

 ミナもまた、森に住む危険な存在の脅威にさらされながら、生きるために同様の行動をさせられ、ルールを守ることを余儀なくされる。そんな日々が続いていくなか、彼女はルールを逸脱しようとすることで、次々に起こる怪異の謎や、奇妙なルールの真相へと次第に迫っていくことになる。

 本作は、限定空間と制約のなかでサバイブする人物たちの奮闘を描く、一種の「シチュエーションスリラー」として観客の興味を喚起し、観客を謎解きゲームに参加させるような構成と、意外な展開の連続によって娯楽性を高めている。もともと、こういったストーリーや趣向、ギミックを原作者のA・M・シャインが選んでいるのは、読者を強く惹きつけようとする試行錯誤だったと考えられる。そして、その試みはイシャナ・ナイト・シャマラン監督もそのまま踏襲している。

 このような性質の作品であるため、これ以上のストーリー展開を紹介することは、ここではできるだけ避けようとは思うが、歴史学の修士号を持っているというA・M・シャインが、このシチュエーションの舞台設定に、アイルランドの歴史や妖精についての伝承などの要素を反映させていることは、指摘しておかなければならないだろう。

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