『漂着者』第1話から謎ばかり ヘミングウェイの周りに起こる不思議な出来事

『漂着者』第1話から謎ばかり

 謎の中心にいるのはヘミングウェイだ。SNS上でどんなにバズっても自身につながる手がかりが皆無な彼は、情報以前の存在と言えるだろう。「驚くようなもんには必ずタネがあんだよ」とうそぶく柴田は、ヘミングウェイが顕現する人智を超えた“現象”を懐疑によって捕捉しようとする。「真実は明かされるべき」と執念を燃やす詠美に、上司の橋(橋本じゅん)は「暴くべき真実と眠らせておくべき真実がある」と諭す。

 「タネ明かし」と言われるように、タネは明かされることが前提にある。しかし、物事の順序をたどれば真実に行き当たるかと聞かれれば、必ずしもそう言い切れないのではないか。よしんば真実を知ったとして、それを暴くことが何をもたらすかは予測できない。知ることの先にあるのが眠らせておくべき真実でも、私たちは知ってしまったことの責任から逃がれられない。ヘミングウェイがもたらす真実が、福音かそれとも災厄であるかは、箱を開けるまでわからないのだ。

 超常現象とSNSに代表される知ることへの欲望と対置する構図は、それ自体がメディア的で秋元康ならではの視点といえる。秋元企画・原作の『共演NG』(テレビ東京系)で、ショーランナーという客観/外部パートを担った斎藤工は、本作で始原的な存在としての自己を身一つで演じてみせた。越境者の意図がのぞく『漂着者』が野心的な作品であることは間違いない。

■放送情報
『漂着者』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~24:15放送
出演:斎藤工、白石麻衣、船越英一郎、リリー・フランキー、戸塚純貴、野間口徹、橋本じゅん、生瀬勝久、太田奈緒、隅田杏花、吉田志織、橋本じゅん
企画・原作:秋元康
脚本:神田優、ブラジリィー・アン・山田
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:飯田サヤカ(テレビ朝日)、菊池誠(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
演出:本橋圭太(アズバーズ)、山本大輔(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/hyouchakusha/
公式Twitter:@hyochakusha2021 (https://twitter.com/hyochakusha2021)
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