『漂着者』第1話から謎ばかり ヘミングウェイの周りに起こる不思議な出来事

『漂着者』第1話から謎ばかり

 神秘は海からやってくる。1年の延期を経て、半世紀ぶりにこの国に夏季オリンピックが開幕した7月23日、1人の男が海岸に流れ着いた。男の名前はヘミングウェイ(斎藤工)。自分が何者であるかを知らないその男は、誰も知らない真実を探り当てることができた。

 秋元康が仕掛ける金曜ナイトドラマ『漂着者』(テレビ朝日系)。主人公は「勝者には何もやるな」といきなり放ったことから、ヘミングウェイと命名された男。第1話では謎めいたヘミングウェイの出自につながる手がかりが明かされた。

 インターネット上で全てが流出し、暴露される現在、神秘はもはやどこにも存在しないように思える。『漂着者』は、対象を言語化し、問題設定によって定義する時代に、あえて大きなクエスチョンマークを提示する。ヘミングウェイの風貌は救世主のようであり、海の男にも文豪のようにも見える。消去された記憶は、意味の地平が無化されたことを示す。漂着したのが生命の誕生した海辺であることや、一糸まとわぬ主人公の姿は象徴的だ。終盤のヒントから、彼が教祖であると早合点しそうになるが、それはいずれはっきりするだろう。第1話のポイントは彼が体現した「奇跡」にあった。

 物語の主要人物はそれぞれが役割を担っている。新聞記者の新谷詠美(白石麻衣)は「真実を知りたい」という思いに駆り立てられ、捜査一課の刑事・柴田俊哉(生瀬勝久)は、女児の失踪事件を担当する過程でヘミングウェイの存在を知る。ヘミングウェイが病室で描いた絵。失踪した女児が発見された場所を示唆するその絵はSNSで透視ではないかと話題になり、新谷と柴田が病室を訪れる。まるで超能力者のようだが、ヘミングウェイの記憶は失われたままで、心当たりも一切ない。ヘミングウェイは、新谷の来院だけでなく柴田がコーヒーをこぼしたことも予言。その能力は本物だった。

 ヘミングウェイの周りでは、不思議な出来事が起こる。入院患者の後宮徳治郎(越村公一)の不審死から間を置かず、ローゼン岸本(野間口徹)が現われる。ヘミングウェイの足首に彫られたタトゥー、また後宮と岸本が取った腕を胸の前で交差させるポーズの意味。そして突然の身投げ。ここには何かがある。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる