ウィズコロナ時代をどう描いている? 『#リモラブ』『姉ちゃんの恋人』『共演NG』の描写に注目

秋ドラマはコロナの時代をどう描いている?

 10月にスタートした秋ドラマはそれぞれ折り返し地点を過ぎ、後半戦へ。春ドラマと夏ドラマは4月に出された緊急事態宣言の下、撮影を中断したり放送延期になったりして大混乱だったが、ここに来て例年どおりのペースに戻ったようである。内容も医療ドラマ、推理サスペンス、ラブコメディ、不倫ものなど、定番ジャンルが並んでいるが、よく見れば、大きな違いがある。それは「物語の世界線がウィズコロナになっているかどうか」。リアルタイムのストーリーであれば、2020年10月から12月を描くことになり、世の中はウィズコロナで街ゆく人のほとんどがマスクを付けているニューノーマルの世界なのだが、大多数のドラマはコロナ前かコロナのない別の世界を描いている。はっきりとウィズコロナだと宣言したのは、『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)、『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)、『共演NG』(テレビ東京系)の3作だけだ。

『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(c)日本テレビ

 脚本・水橋文美江、主演・波瑠の『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』は、最もリアルにウィズコロナの社会を描いている。時代に果敢にコミットしていると言っていい。波瑠演じる産業医・美々(みみ)は企業の健康管理室に勤務し、1000人を超える社員たちに感染予防を呼びかける立場の女性。体温37.5度を超える人がいれば警備員を呼んで帰宅させるほどの強制力を持ち、責任感も強い。ソーシャル・ディスタンスを守らない人を手で制止したり、マスクを付けていない人にはマスクを渡したり、フェイクニュースを信じている人には「デマです」と注意したりと、勤務中はとにかく忙しい。そんな美々に接近していく人事部の青林(松下洸平)や五文字(間宮祥太朗)は、健康管理室に入るたびに手をアルコール消毒し、会議室では透明のアクリル板越しに会話する。そのオフィスライフは今のリアルそのものだ。物語は2020年4月の時間軸から始まり、リモートワークの時期を経て、また10月から再開して現在に至る。

 それゆえ、キャストのマスクの着用も現実に即していて、ひとりで自宅にいる場面は外しているが、勤務中やデート中などはきちんと着用。ドラマとしてリアリティのある映像を作ることが、実質的にキャストの感染防止にもなるわけで、これはうまい手だなと感心させられた。さらに、このドラマがすごいのは「コロナでたいへんだ」というシリアス劇ではなく、単なるお仕事ものでもなく、あくまでラブコメディだということ。連続ドラマとして、いち早くこの現実を笑いに変換しているのだ。脚本の水橋は6月に単発ドラマ『世界は3で出来ている』(フジテレビ系)で既にコロナで変わった世界を描いており、林遣都演じるいまいちパッとしなかった会社員がリモートワークになってオンライン会議のファシリテーター(仕切り役)としての才能を開花させるなど、最先端のビジネスシーンにも取材していたことに驚いた。この『#リモラブ』ではそこからまた一歩踏み込み、ウィズコロナの時代に新しい恋が生まれたらどうするのか? デートは? キスは? その先は?という誰もが気になっていることを描いている。

『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(c)日本テレビ

 12月2日放送の第7話では、ついにお互いへの恋心を確かめあった美々と青林が、恋人としての身体的コミュニケーションをするのかという展開になってくる。青林はその前に同僚の我孫子(川栄李奈)と付き合っていたが(マスク越しのキスシーンがあった)、濃厚接触を避ける青林に不満を抱いた我孫子から別れを告げられてしまった。これも、ウィズコロナの時代のリアルかもしれない。その失敗を乗り越えて、美々とは濃厚接触するのだろうか? 第1話から繰り返し出てくるセリフに「命より大事なものがありますか」「あると思います」という2人のやり取りがあるのだが、医療のプロである美々からすれば、まさにこれは“命がけの恋”になるのかもしれない。

『姉ちゃんの恋人』(c)カンテレ

 ウィズコロナの時代の職場を描くということでは、脚本・岡田惠和、主演・有村架純の『姉ちゃんの恋人』も同じだ。こちらの仕事場は郊外のホームセンター。主人公の桃子(有村架純)は高校生のときに交通事故で両親を亡くし、弟3人を養うため、卒業後、ホームセンターに就職して真面目に働いてきた。第1話の回想シーンが印象的だった。今年の春、入荷したマスクを運ぶ桃子に客が殺到し、集団心理でちょっとしたパニックに。たしかに当時、ホームセンターやドラッグストアで働く人は精神的にも疲弊したに違いない。同時期、配送部の真人(林遣都)は前科持ちゆえ、コロナでホームセンターが経営不振になり、職を失ったらどうしようかと思っていた。そこが、「うちは大企業だから大丈夫」という前提がある『#リモラブ』とは違うところ。桃子の親友である、みゆき(奈緒)も大打撃を受けた旅行会社に勤め、この先、今までどおり働いていけるのかと不安を抱える。一寸先は闇になりかねない、約束された未来がない世界に桃子たちは住んでいる。

 それだけではなく、恋人たちはそれぞれ辛い思い出を抱えている。桃子は目の前で両親の事故を目撃し、真人は婚約者の女性がレイプされかけ相手の男を棒で殴ってしまい有罪となった。これらは新型コロナウイルスとは関係がない過去のことではあるけれど、そこで描かれる突然の不幸や理不尽な成り行きというのは、コロナの直接的、間接的な被害にシンクロするかもしれない。平和な毎日が続いていくはずだったのに、感染症で肉親が亡くなるとか、自分は悪くないのに感染し罪人とされてしまうとか、そんなことも連想できる。12月1日の第6話以降は、そういった残酷な現実を愛の力で乗り越えていけるのかという純愛ストーリーらしい展開になってくるようだ。

『姉ちゃんの恋人』(c)カンテレ

 ただ、ホームセンターで働く桃子たちはもうマスクをしていない。桃子の上司・日南子(小池栄子)が夜のバーに通うときも、真人の母・貴子(和久井映見)が弁当屋で接客するときも。桃子と日南子、真人とその先輩・悟志(藤木直人)でダブルデートするときも。これはおそらく、リアルではなくても、役者の顔をちゃんと見せて表情で語りたいという制作方針によるものだろうし、観る方としてもその方がストレスはないのだが、現実にホームセンターで働いている店員はみなマスクを付けているので、ふとした瞬間にどうしても違和感は出てしまう。

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