波瑠、同世代の共感を集める表現力 次なる篠原涼子的存在になるか?
現在放送中の『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)で演じている夜間勤務専門の救急医・朝倉美月役も、何かしら訳ありの家族事情を抱えていそうだ。家族事情を自身のせいだと責める父親から “普通の恋愛をして普通の幸せを手に入れてほしい”と勝手に懇願されるも、“普通の幸せって何?”と何度も反芻し反発心をあらわにする。
『あなたのことはそれほど』(TBS系)での妻・美都役もそうだ。プロポーズされたその日から後の夫となる涼太(東出昌大)に対する自身の本心から目を逸せず、結婚後に不倫に走る。いくつになっても“結婚は一番好きな人とするもの”だというブレない強迫観念にも似た信念を持ち、こと恋愛のことになるとどこか浮世離れしてしまうある意味純粋さゆえの残酷さを持ち合わせた女性を見事に演じ切った。
同じくいくえみ綾コミック原作の『G線上のあなたと私』(TBS系)でも、主人公の也映子役を好演した。寿退社間近に婚約破棄されたアラサー女子であり、バイオリン教室で出会った男子大学生・理人(中川大志)と互いに惹かれ合っていくぎこちない恋模様もそのままに見せる。“グレー”を“グレー”のままにすることもできるが、そこから勇気を持って一歩踏み出そうとする主人公の心の変化を嘘偽りなく映し出していた。
昨年放送の話題作『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』(日本テレビ系)での大企業の産業医・美々先生はとにかくクセになるキャラクターだった。青林(松下洸平)とのこじらせ男女の心の距離が近づく様子を、落ち着いた佇まいと地に足のついた存在感でみせていく。単なる“ラブコメ”とは一線を画した作品に仕上がっていた。
波瑠演じる役柄には“わざとらしさ”や“嘘っぽさ”がない。淡々とそこに存在して、淡々と生活を営んでいるその悲喜こもごもを地続きに見せてくれるのだ。
かつて波瑠自身はインタビューで「やりたいこと、やりたくないことを混ぜないで、少し無理をして頑張ったなら、そのぶんしっかり褒めてあげるとか。そういうことができないと、大変ばかりで、自分にも他人にも優しくなくなってしまう気がするんです」と話していた。(※1)“見過ごせない自分の心の声”に常に耳を傾けることができる彼女だからこそ、キャラクターを演じるにも変な気負いがなくただただそこに存在してくれる。だからこそ、自分が生きる世界線と波瑠が作中で生きる世界線がリンクしているように思える瞬間があるのだ。
決して、特別でスペシャルなことばかりではない日常も悪くないなと、なんだか作中の波瑠が奮闘している姿を観ながら自身の日常を愛でることが出来ている気がするのだ。
<参照>
※1:https://news.yahoo.co.jp/articles/70eb186216f6313070d3228d530ef5331aefee02
※『ラスト・シンデレラ』の「・」はハートマークが正式表記。
■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好き。Twitter
■放送情報
『ナイト・ドクター』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:波瑠、田中圭、岸優太(King & Prince)、岡崎紗絵、北村匠海、沢村一樹、一ノ瀬颯、野呂佳代、櫻井海音、梶原善、真矢ミキ、小野武彦、原菜乃華、宮世琉弥ほか
脚本:大北はるか
プロデュース:野田悠介
演出:関野宗紀、澤田鎌作
制作・著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
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