「あなただけではありません」 『おかえりモネ』視聴者の心も救う朝岡の言葉

『おかえりモネ』視聴者の心も救う朝岡の言葉

「何もできなかったと思っているのはあなただけではありません」

 6月30日に放送された『おかえりモネ』(NHK総合)第33話の朝岡(西島秀俊)の上記の言葉に救われた、心揺さぶられた視聴者は多かったのではないだろうか。

 故郷の気仙沼・亀島を離れ登米で働くことを選んだ百音(清原果耶)。生まれ育った海ではなく、山を仕事場に選んだのは、“あの日”に家族・友人たちと一緒にいることができなかった後悔、何もできなかったという思いが根底にあった。

 爽やかで真っ直ぐで、明るく誰に対しても笑顔で接することができる百音。しかし、ふとしたときに心の闇を覗かせてきた。百音を演じる清原果耶の辛さや悲しさとはまた違う、虚無的な表情の凄みもあり、どこか“無理をしている”印象が百音にはあり続けた。

 そんな百音を救うように、再び登米にやってきた朝岡は冒頭の言葉をかける。“あの日”に何もできなかったという思いを抱えているのは百音だけではないのだ。本作の登場人物たち、そして今を生きる私たちは、影響の差はあれど、2011年3月11日を経験している。直接の被害を受けていなくても、大切な人を失っていなくても、あの日に何もできなかった/しなかったことの後悔を感じている人は少なからずいるだろう。震災から10年経った今も傷跡は残り続けている。朝岡の言葉はそんな傷を癒やすように、その後の苦しみに向き合うように次の言葉を語りかける。

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