市ノ瀬加那、今年注目の声優に 『ひげひろ』『Dr.STONE』など人気作で相次ぐ活躍
「第15回声優アワード」新人女優賞受賞の有望株
市ノ瀬が演じた主要キャラには、自ら殻を破って世界を広げていくという共通項があり、それはまだ経験豊富とは言えない彼女だからこそリアルに演じることができたキャラクターだったと言えるだろう。例えば『Fairy gone フェアリーゴーン』は全2クールに渡る長い放送期間で、この間の彼女自身の成長がマーリヤ像と重なりキャラクターをより輝かせた。『キャロル&チューズデイ』も同様だ。
また、『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』の主人公・荻原沙優は北海道から単身上京したキャラクターで、同じく北海道から上京して声優という新しい世界に飛び込んだ、市ノ瀬自身とまさに重ねることができただろう。『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のイチゴ役から約3年、彼女自身のその時のキャリアでしか演じることのできない役と幸運な出会いを果たし、演じるキャラクターと共に成長してきたのが市ノ瀬加那なのだ。
人柄としては、真面目で積極的という印象。『ダーリン・イン・ザ・フランキス』での取材時に、コメントをびっしり書き留めたノートを握りしめ、先輩に交じってしっかり自分なりの意見を発言していた姿が今も鮮明だ。後日たまたま同じ場所に居合わせた時に、自ら挨拶にきたこともあった。新人であれば当たり前のことかもしれないが、それがしっかりできる人は決して多くない。
やさしい空気をまといながら、その芯に確固たる信念を感じさせる声質。実に耳当たりが良く、まだ何者にも染まっていないピュアさと、無限の伸びしろを感じさせる。今年3月に「第15回声優アワード」で新人女優賞を受賞した実績は決してだてではなく、今後の活躍が期待される有望株だ。
■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。