『SHAMAN KING』はキャラの魅力が全開 声優界の一大プロジェクトに

 毎週木曜17時55分からテレビ東京系列で放送中のアニメ『SHAMAN KING』は、霊と交流できる少年・麻倉葉がシャーマンの頂点「シャーマンキング」を目指して戦う物語。最新話の第10話では、「シャーマンファイト」予選を勝ち抜いた葉の前に、霊柩車に乗った2人組のBoZが出現。錫杖マイクとエレキビワを手にした仏教系ユニットは宿敵・葉王の手下だった。

 『SHAMAN KING』のアニメ化は2度目。1度目は2001年7月から翌2002年9月にかけて放送され、タイトルは『シャーマンキング』(テレビ東京系)だった。完全新作アニメーションとして転生した2021年版は、完結版の原作を踏まえつつ前作からの連続性も感じさせる見応えのある内容となっている。

 生死を超越した世界観やバトルアニメとしてのユニークさもさることながら、何よりも登場人物が魅力的なのが『SHAMAN KING』だ。過去を背負った霊たちと彼らを召喚するシャーマンはもれなく個性的で、それは主要キャラ以外のサブキャラにも当てはまる。前述したBoZのような遊び心のある設定が随所に登場し、キャラクターの背景や性格だけでなく、霊のデザインや必殺技など作者のこだわりが隅々まで行き渡っている。本作の根強い人気はキャラクターの魅力に負うところが大きく、そのことは本編完結後もサブキャラが活躍する続編や派生作品が次々と送り出されていることからもわかる。

 サブキャラの活躍は主人公・葉の性格にも関係がある。「なんとかなる」が口癖でシャーマンキングを目指す理由が「楽に生きたいから」という葉は、少年漫画にありがちな超人的あるいは熱血タイプの主人公とは一線を画している。もちろん『SHAMAN KING』もバトル漫画の設定を踏襲しており、葉も戦いを通じて成長を遂げていくのだが、マイペースでガツガツしていない分、それだけ主人公の属性が周囲のキャラクターに分散して反映されているように感じるのだ。

 たとえば、まん太のツッコミは葉のゆるさを引き立て、アンナとの絆が葉をシャーマンファイトに向かわせる。ライバルの蓮は葉を挑発し、隠れていた能力を引き出す。バトルシーンでの蓮の登場回数は本作で1,2を争うものだ。ハオはあくまで最強の地位を譲らず、その存在自体が本作のテーマになる。緩衝地帯のような主人公の周りで、登場人物は何の制約もなく各自の持ち味を発揮する。それを許容する器が葉にはあって、こうしたキャラの立たせ方が逆説的に葉という人間の姿を浮き彫りにする。竜が言うところの「ベストプレイス」、あるいは決して主張しない物語の「場」としての主人公像を打ち出したのが『SHAMAN KING』と言ったら言いすぎだろうか?

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