『リコカツ』視聴者を惹きつける胸キュンシーンの数々 絶妙な距離感があぶり出す“本心”

『リコカツ』胸キュンシーンの数々を振り返る

 離婚に向けた活動(離婚活動)をテーマに描いた『リコカツ』(TBS系)だが、毎話放送直後には紘一(永山瑛太)と咲(北川景子)の歯がゆいもどかしさのある胸キュン名シーンにSNSが沸いている。

 当然リコカツを経て離婚した2人は常にラブラブということは全くなく、それでも日常のふとした瞬間でいきなり2人の心の距離が近づくシーンが、胸焼けするような甘いだけのラブシーンと違い、ホームドラマをベースとした大人のラブコメを感じさせてくれる。

 “2人でいるからこその煩わしさ”が描かれる一方、それは裏を返せば“1人でいては湧き起こらない感情”であり“2人でいることの醍醐味”とも言えることを暗に伝えてくれているように思う。

 まず、印象的だったのは、結婚直後に離婚を決めた2人が、紘一の母親・薫(宮崎美子)の勤務先を突き止め箱根の旅館に行くことになった第3話。新婚旅行さながらのシチュエーションにまた距離が近づき始めた2人だったが、その夜、外でしとしと降る雨を見ながら浴衣姿の咲が紘一に言うのだ。

「私たちは今、雨宿りしてるんじゃない? 雨が止んだら別々に歩き出す。今は少しの間だけ同じ場所で雨宿りをしている、そういう関係なんじゃないかな」

 とても幻想的で美しいシーン、かつ両親や自分たちのリコカツのことを“雨”に例えた言い得て妙な台詞だった。初めての2人での旅行にまんざらでもなかった彼らだが、もう変えようのない“離婚に向かっているという事実”に、“距離が近づいたのに近づききれない、まだ遠い”“埋められそうで埋められない”歯痒く切ない距離感がそこには見えた。

 薫から紘一が自分と結婚した理由を初めて聞かされ、咲が「まだあなたの妻だから」と初めてこれまでの紘一の決め台詞へのアンサーを口にしたのも第3話だ。その後、思わず紘一が慣れないバックハグで力強く抱きしめるところまでセットで話題になっていた。

 また、互いの両親の離婚がいよいよ真実味を帯び出した第4話では、紘一の「君も傷付いたんじゃないか……?」という思いがけない問いかけに、思わず堪えていた涙が溢れ出す咲。

「やっぱり寂しいね。戻る家がなくなるって。本当にひとりぼっちになっちゃう」

「もういい、離婚はやめよう。君が傷つく姿をもう見たくない。君を1人にはしない」

 涙する咲を紘一が抱きしめ離婚撤回するシーンも印象的だった。

 おそらくそもそもスマートな元彼の貴也(高橋光臣)であればこうはならない。先回りして咲の思いを読み取ってしまい、基本的に強がりたい彼女に自分の気持ちを吐露させる場面を与えてしまわない気がする。強がりながらも今にも崩れそうな彼女に「君はどうなんだ……?」と、まず目の前の彼女を心配しそれをそのまま口にする紘一だったからこそ、この時ばかりは咲も自分の本音が言えたのではないだろうか。

 2人が関係を見つめ直したかに思えた中、待ち受けていたのが名シーンのオンパレードだった第6話。不思議なもので離婚届を提出する前夜の出来事にあらゆる胸キュンが詰まっているなんて皮肉なものだ。

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