『リコカツ』視聴者を惹きつける胸キュンシーンの数々 絶妙な距離感があぶり出す“本心”

『リコカツ』胸キュンシーンの数々を振り返る

 最後の晩餐シーンもとてもリアルだった。咲の焼き魚を食べながら「いつも焼き加減が違って緊張する。いつの間にか、この焼き魚が、ウチの味になってた」と紘一が素直な想いを伝える。初めの頃は「生焼けだぁ」と不服そうだった紘一とはまるで違う。

 さらに、咲が海外から取り寄せていたカーテンが今になって届く。カーテンひとつとっても考えが違い喧嘩のタネになっていた2人だが、紘一が涙を堪えながら言うのだ。「このカーテンをつけることができて良かった。自分がいなくなっても、せめて君のことを守れるように……」

 身の回りのもの“全て”にすれ違いエピソードが詰まっているような2人だが、この短期間でそれら全部に愛着が湧き、“2人で過ごした証”に様変わりしている様子に、何よりここまで素直になれた紘一自身の経年変化にも胸を打たれてしまうのだ。「自分は思いを言語化するのに時間がかかる。すまない」と謝る紘一の姿は、第8話で“貴也とやり直す”と言う咲の嘘に思わず「良かった」と答えた後、硝子に反射した自分の顔を見て「お前、嘘ついたな」と言い放ち涙するシーンに見事回収されていたように思う。本当に大切に想う咲とのやりとりだからこそ“自分の気持ちを伝えることが苦手”と気づき、さらにその後遂に“自分の本音に嘘をついてきた”ことを自認するまでに紘一は変化している。

 身体的な接触どころかデートシーンさえほとんどない中、その常々変化する絶妙な距離感と感情の機微を、2人の表情や間合いで見せてくれ、頑なに嘘をつこうとする姿こそがその裏に隠された“本心”をより炙り出す形になっている。とにかくいつだって真剣に全身全霊で向き合いぶつかり合っている2人が、互いに相手のことを第一に思いやっている2人のことが我々にはただただ眩しく羨ましいのかもしれない。

 ラスト2話、“全員離婚家族”の彼らが再びどうやって自分たちの運命を手繰り寄せるのか。リコカツを経てどんな関係を築いていくのか、最後まで楽しみで仕方ない。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好き。Twitter

■放送情報
金曜ドラマ『リコカツ』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:北川景子、永山瑛太、高橋光臣、白洲迅、大野いと、田辺桃子、中田クルミ、平岩紙、宮崎美子、酒向芳、三石琴乃、佐野史郎
脚本:泉澤陽子
演出:坪井敏雄ほか
プロデュース:植田博樹、吉藤芽衣
主題歌:米津玄師「Pale Blue」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作著作:TBS
(c)TBS

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