Netflix、MCU、HBOなどから考える、映画とドラマの新時代 垣根はほぼ取り払われている?

映画とドラマとの垣根が取り払われている?

 近年、海外ドラマを中心に「映画を超えるクオリティ」と評される映像作品が増えている。ここでの「映画」とは、製作費が1億ドル以上かけられるような、ハリウッドのブロックバスター映画を指す。世界中から屈指の才能が集結するハリウッドでは、商業を目的としたエンタメの映像作品として映画が最高峰とされてきた。

 しかし、NetflixやDisney+をはじめとした動画配信サービスの普及、そしてコロナ禍の影響により、映画とドラマとの垣根が取り払われていこうとしている。本稿では、近年のハリウッド映画やドラマの動向をさらいつつ、現状を紐解いていく。

コロナ禍による動画配信サービスの重要性の高まり

 映画や海外ドラマとの垣根がなくなってきている一つの原因としては、もちろん新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きい。世界の主要都市でロックダウンなどがなされた2020年は、多くのハリウッド映画が世界的に公開延期となった。そんな中、疲弊する映画館を支援する目的もあり2020年9月3日から全米公開された『TENET テネット』は、2週間遅れての公開となった日本では興行収入20億円を突破する大ヒット。

『TENET テネット』(c)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

 しかし、アメリカでの興行は振るわなかった。それには、国内で第1位・2位の市場規模を誇るニューヨークとロサンゼルスのほか、主要都市の映画館が営業再開しないままの公開となったことに大きな要因がある。そうした状況の中では健闘したとも言えるものの、ハリウッド全体としては「まだ大作を公開するには時期尚早」という判断がなされ、『ブラック・ウィドウ』をはじめとしたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品や、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』、『DUNE/デューン 砂の惑星』といった作品の公開が相次いで延期されることとなった。

 こうした、映画館で以前のように映画を観ることのできない状況は2021年になってからも依然続いており、休業要請が続く日本の都市部の映画館はもちろん、ニューヨークとロサンゼルスでは、定員の25%の入場で3月から映画館の営業が再開されたばかり。

 一方、そうした情勢を反映し、巣ごもり需要が軒並み高まっていることは日々様々なメディアでも報じられている。映画やドラマに関しては、自宅はもちろん、テレビの前でなくともマルチデバイスで好きな時に作品を楽しむことのできる動画配信サービスの伸びが顕著だ。日本でもここ数年で急速に普及したNetflix、 Amazon Prime Video、Huluといった動画配信サービスは、2021年2月にGEM Partners株式会社が発表した調査結果によると、日本国内では2020年、動画配信市場の全体規模が前年比で33.1%増え、3,894億円となった。

 世界規模で見ると、昨年末時点で契約者数が2億人を突破したNetflixの決算報告によると、2021年の第1四半期の売上高が71億6,300万ドル、前年同期比24%増と、契約者数の伸びは鈍化しているものの、会員一人あたりの単価が前年比で6%増えている。

『マンダロリアン』(c)2020 Lucasfilm Ltd.

 また、昨年6月に日本でもサービスが開始されたDisney+も好調で、決算報告によると今年4月時点で全世界の契約者数が1億360万人を突破。これは1年間で7,000万人以上契約者数が増えたことになり、『スター・ウォーズ』の実写ドラマ『マンダロリアン』の高評価や、『ワンダビジョン』、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』といった、今年から相次いで配信が開始され始めたMCU作品を観ようと、契約者が増えていることも大きな要因と考えられる。

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