Netflix、MCU、HBOなどから考える、映画とドラマの新時代 垣根はほぼ取り払われている?
MCUドラマシリーズの大成功と存在感
エミー賞の結果やヒットが、よりシリーズものを“映画規模に作る”というドラマ業界の流れに後押しした。そんな中、特に注目を浴びているのが、マーベルが新たにディズニープラスで独占配信し始めたオリジナルドラマシリーズ。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のヘッドライターであり制作総指揮のマルコム・スペルマンは、MCU作品の製作の裏側を紹介する『MARVEL STUDIOS アッセンブル』にて、「社長(ケヴィン・ファイギ)以下スタッフの要求は、“映画のような作りにしてくれ”だった」と語っている。まさしく、業界大手のスタジオは今ブロックバスター映画と並べても遜色のないドラマ作りを求めているというわけだ。ただ、なぜMCUのドラマがこれほどまでに抜きん出て成功しているのか。
例えばDCコミックスを原作とする実写作品では、ユニバースが長大になればなるほど全体のコントロールも難しくなることや、予算やスケジュールの問題など様々な問題から、例えば映画とドラマでスーパーマンやフラッシュのキャストが違っても受容されてきた。また、人気の映画シリーズをドラマ化した『トランスポーター ザ・シリーズ』や、『ボーン』シリーズの『トレッドストーン』などもあったものの、ムーブメントには至らなかった。
しかし、MCUでは映画もドラマも同じ役は同じキャストで撮影するので、映画スターがドラマでもメインキャストとして登場する。そして、映画・ドラマ含む全体で大きな物語を描くよう、長期計画を立ててフェーズ分けし、ユニバース全体をしっかりコントロールしている見立て。さらに作品が相互にクロスオーバーしていくこと、こういった要素がファンの心を掴み続け、成功を収めるに至っているのではないだろうか。
もはや映画もドラマも、配信でいつでもどこでも観ることができるという点でも、クオリティの面でも、垣根がほぼ取り払われていると言える。両者を分けるのは、ほぼエピソード毎に分けられているという点のみだ。
しかし、映画ファンにとっては、映画館での体験はかけがえのないもの。フィルム撮影された作品の映像の質感や、IMAX上映、高品質な音響での上映も格別だ。現在はコロナ禍で、以前のように自由に映画館に行ける状態ではないが、この期間で映画もドラマも良い点を吸収し合い、世の中が元通りになった暁には、相乗効果で「映画のようなクオリティのドラマ」、「ドラマのような重厚さを持つ映画」が生まれる新時代の訪れを願うばかりだ。
■桜見諒一
パブリシスト/国内外の実写・アニメーション映画を中心に幅広い作品の宣伝業務を行う傍ら、2021年よりライター活動を開始。Twitter
■配信情報
ディズニープラスオリジナルドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
ディズニープラスにて独占配信中
出演:アンソニー・マッキー、セバスチャン・スタン、ダニエル・ブリュール
監督:カリ・スコグランド
脚本:マルコム・スペルマン
原題: The Falcon and Winter Soldier
(c)2021 Marvel