『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』が描く、現在のアメリカの社会状況とヒーローの内面

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』が描く、現在のアメリカの社会状況とヒーローの内面

 『ワンダヴィジョン』に続く、マーベル・スタジオのドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は、フライトスーツを装着して縦横無尽に空を飛ぶヒーロー「ファルコン」と、超人的な力と機械の片腕を持つヒーロー「ウィンター・ソルジャー」が、ともに新たな敵に立ち向かう話題作だ。

 本作のポイントは、巨費を投じたマーベル・スタジオのMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)映画並みのスケールでアクションが展開するという豪華さと、『ワンダヴィジョン』同様に、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)以降のヒーローたちの物語が描かれるところである。そして公式に発表されている、本作の「新たなキャプテン・アメリカ誕生を巡る物語」にも注目が集まる。

 アベンジャーズにとって、これまでで最強の敵だったサノスが起こした大量殺戮「デシメーション(指パッチン)」によって、宇宙の全生命体の半分が無作為に消滅した。キャプテン・アメリカやアイアンマンら残ったヒーローたちの驚くべき作戦で生命体は復活し、サノスを打ち倒したことで、世界は一応の平穏を取り戻した。もちろん、本作の主人公であるファルコンことサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)、ウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)を含め、消えた人々が戻ってきたことは喜ばしいが、単純に「めでたし、めでたし」とはいかなかった部分もある。本シリーズの舞台となるのは、その後の世界である。

 「指パッチン」から、消えた半分の人々が帰還するまでに、5年もの歳月が流れている。現世に戻ってきた人々は、自分たち無しで5年間まわっていた社会に戻っていかなければならないのだ。それは深刻な社会問題となっていて、世界を救う戦いに身を投じたサムであっても、経済状況や人種への偏見にさらされ、生きづらさを味わっていた。そこには、様々な理由によって分断が深まっている、現在のアメリカの社会状況が色濃く反映している。

 第1話では、ファルコンたちの敵となる組織が示される。それが、「指パッチン」の世界を未だに支持している過激な団体「フラッグ・スマッシャーズ」である。この名前は、コミックでキャプテン・アメリカと因縁がある。また、巷には荒唐無稽な陰謀論が飛び交っているという噂も流れている。これもまた、現在のアメリカそのものを表していると感じられる部分だ。

 ファルコンことサムは、かつてキャプテン・アメリカから直々に、彼の象徴でありアメリカの正義の象徴ともなった“盾”を手渡されていた。「君が次のキャプテンになってくれ」という意味のプレゼントである。だが、第1話では、サムはその重責に耐えられず、盾をスミソニアン航空宇宙博物館に寄贈してしまう。

 ウィンター・ソルジャーことバッキーは、かつて悪の組織「ヒドラ」に洗脳され、多くの罪なき人々を殺めたが、いまでは自分の意志を取り戻し、ヒドラに所属する者たちの逮捕に協力するようになった。だが、毎日のように悪夢を見るなど、心に深い傷を負ったままだ。政府は、免罪する条件として、定期的にカウンセリングに通うことを義務づけている。

 「ウィンター・ソルジャー」という言葉は、もともと身体や心に傷を負ったベトナム帰還兵を指すものである。第二次大戦において華々しく活躍したキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースが氷づけにされて眠っている間にウィンター・ソルジャーは、ヒドラに人間兵器として利用されていたのだ。

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