草なぎ剛、“やっちまった”慶喜の怒りと笑顔 『青天を衝け』第1回とは別視点の運命の出会い

『青天を衝け』第1回とは違う視点の出会い

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第14回「栄一と運命の主君」で、ついに栄一(吉沢亮)と喜作(高良健吾)が慶喜(草なぎ剛)と運命の出会いを果たす。

 面白いのはすでに描かれている、遠乗り途中の慶喜を2人が全速力で追いかけるあの第1回「栄一、目覚める」の名シーンをもう一度再解釈していくことだ。『青天を衝け』自体の開幕を告げる第1回はとにかく走って、走って、走りまくるその姿から、栄一の血気盛んでまっすぐなキャラクター性を打ち出す側面が強かった。けれど、この第13回ではその栄一たちが走る目的と事前にあった円四郎(堤真一)とのやり取りを背景に、また違った視点から同じ場面を見ることができる。

 事も有ろうに慶喜にじかに会いたいと言い出した栄一。しかし、ここで2週間ぶりの登場となった徳川家康(北大路欣也)が説明しているように、この頃の慶喜は差し迫った自体に追い込まれていた。薩摩の島津久光(池田成志)をはじめとする外様が幕府に対抗する力を持ち始めていたのは先週までの物語。朝議参与でありながら幕府の将軍後見職でもある複雑な立場の慶喜はその板挟みになっていたのだ。

 そこで円四郎が自身の意地から栄一らに指示したのが、遠くからでも自分たちの姿を見せて「己が何某でござる!」と慶喜にアピールすること。「幸い明日、松ヶ崎で御乗切りがある。おめぇらはその途中で出てきて、どうにか顔をお見かけしてもらえ。おめぇら馬に負けねえよう、駆けろ!」という円四郎の言葉が栄一たちを全速力で走らせていた。

 結果、栄一はどうにか慶喜と言葉を交わすことに成功するが、慶喜に引っかかったのは「徳川のお命は尽きてございます」という無礼な暴言からだった。まだまだ終わらぬ栄一の意見に円四郎もこらきれず「ぷっ!」と吹き出す。そのことで慶喜は円四郎が手引きしていることに気づき、栄一たちの謁見を許すのであった。去り際の嬉しそうな笑みを含めて、円四郎の粋な計らいが光るシーンだと再解釈することもできる。

 しかし、第14回において、クライマックスとなったのは、慶喜が天皇に信頼の厚い中川宮(奥田洋平)を問い詰め、その場にいた島津ら外様に「天下の大愚物、天下の大悪党にてございます!」と言い放つシーンだろう。

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