『青天を衝け』のマニアックな題材に対しての工夫 『あさが来た』のヒットに続くか?

『青天を衝け』のマニアックな題材に対しての工夫 『あさが来た』のヒットに続くか?

 2月から始まったNHKの大河ドラマ『青天を衝け』は「日本の資本主義の父」と称される渋沢栄一(吉沢亮)の生涯を描いた物語だ。

 時は幕末。渋沢が一橋慶喜(草なぎ剛)に「徳川のお命は尽きております」と直訴する場面が描かれた後、渋沢が幼少期から青年へと成長していく姿と、後に将軍となる慶喜を取り巻く徳川家の内幕が並行して描かれていく。

 脚本の大森美香は、2015~16年にかけて、連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『あさが来た』(NHK)の脚本を執筆している。広岡浅子をモデルに作られたヒロイン・白岡あさ(波瑠)を主人公とした本作は、朝ドラでは異例の江戸時代末から始まる物語で、女性実業家として成功していくあさの姿が描かれた。


 朝ドラは明治・大正・昭和(戦前・戦後)か、現代が舞台にしたものがほとんどで、逆に大河ドラマは、戦国時代と幕末ばかりで、それ以外の時代を描いた作品は苦戦している。

 『あさが来た』が、江戸時代からはじまると知った時は果たしてどうなるものかと思ったが、朝ドラと大河ドラマの良いところをうまく合致させることで女性実業家の視点から見た幕末、明治が描けていた。

 このあたりは制作統括の佐野元彦が2008年に手掛けた大河ドラマ『篤姫』の面白さを踏襲していたと言える。今、振り返るとヒロインの篤姫(宮崎あおい)の成長物語が徳川幕府の幕を閉じる歴史劇に繋がっていく『篤姫』は、朝ドラテイストの強い大河ドラマだったと言えよう。

 そこに『カバチタレ!』(フジテレビ系)等の連続ドラマでポップな会話劇を描いた大森美香の作風が加わったことで、馴染みのない時代の物語でも、抵抗なく視聴者が楽しむことができる敷居の低さが生まれ『あさが来た』はヒット作となったのだ。


 今回の『青天を衝け』は“大河ドラマのような朝ドラ”だった『あさが来た』をひっくり返した“朝ドラのような大河ドラマ”となっているというのが、ここまでの印象だ。何より主人公の渋沢栄一を、まっすぐな好青年として描くことで、朝ドラヒロインの背負っていた純真無垢さを男性主人公によって体現することに成功している。

 ストーリー展開はゆったりとしており、まずは農家の生まれである渋沢栄一の成長物語を通して時代背景を丁寧に描き出している。

 毎回、渋沢が様々なミッションに挑むことで少しずつ成長していく様はRPG(ロールプレイングゲーム)のようでもある。前作の大河ドラマ『麒麟がくる』もそうだが、RPG的な導入を用意することで、ゲームで言うところのチュートリアル(操作方法の説明)に成功しており、視聴者を置き去りにすることなく、物語の中に誘導できている。

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