若者×シニアのケミストリーが話題 韓国ドラマ『ナビレラ』が静かに感動を誘う理由

『ナビレラ』で描かれる若者とシニアの友情

 ドクチュルと過ごすうちに、チェロクは自分に幸せになる価値があると気づき、少しずつ夢と向き合うようになる。バレエの弟子としてチェロクへ尊敬の意を表し、人生の先輩でありながらそれを押し付けるのではなく、「頑張っているんだから、きっとうまくいく」とそばで声をかけるドクチュルの存在が、独り苦しんでいた青年にとってどれだけの励みとなったことだろう。ナビレラーそれでも蝶は舞うー』が毎回感動を生み続けたのは、ドクチュルの言動ひとつひとつの点が線になっていく過程にあったのではないだろうか。

 次第に、チェロクもドクチュルの背中を押すようになる。家族にバレエをすることを反対されて諦めようとした時に、ドクチュルがバレエのポーズをしている写真を家族にみせることを提案したチェロク。誰よりも先にドクチュルの味方になったのは、他でもないチェロクだったのだ。その先も二人は何度となく壁にぶち当たるたび、一歩を踏み出せるようお互いの肩を叩いた。それは支え合うというより、「俺は乗り越えた、さあ次はお前の番だ」とキャッチボールを繰り返して、一緒に成長しているようだった。こうして、世代を越えた師弟デュオが静かに注目を集め、私たちに大きな感情を残していった。

『マイ・インターン』(c)2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED

 さて、若者×シニアといえば、映画『マイ・インターン』(2015年)が思い浮かぶ。アパレル会社のCEOを務めるジュールズ(アン・ハサウェイ)とインターンで入社してきた70歳のベン(ロバート・デ・ニーロ)の物語だ。

 社会貢献の一貫で65歳以上の高齢者をインターン採用することになり、ジュールズの担当にベンが配属された。ジュールズもはじめは「年配の人は苦手」と彼を避ける。彼女にとって、アナログ人間のベンが即戦力になるわけでもなく、彼はただただ気を遣うだけの存在なのだ。しかし、40年間会社勤めをしてきたベンは経歴以上の人間性で信頼を築いた。自然と若者たちがベンを頼り、ジュールズの心の支えとなった彼は、彼女にとって“インターンであり最高の友だち”となる。ベンもまた、自分の経験におごり高ぶることなく彼らを見守り、涙を流す時にはそっとハンカチを差し出した。

 2作品に共通している点は、ドクチュルは夢、ベンはやりがいにもう一度向かうキッカケをチェロクとジュールからもらったこと。そして彼らは、二人に“自分に価値がある”ことを気づかせることができたのだ。

 誰かに声をかけてほしい時、でもどんな言葉をかけてほしいのかわからない時に出会いたい作品が、『ナビレラ ーそれでも蝶は舞うー』である。ドクチュルとチェロクを見守りながら、今度は心を動かされる私たちを、彼らに見守ってもらうのはいいがだろうか。

■ヨシン
韓国作品中心に愛を叫ぶ。一日三膳三ドラマをモットーに、毎日作品に触れる。ソウルフードはトッポッキ。ヨシンは韓国語で「女神」のことです。悪しからず。Twitter

■配信情報
『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』
Netflixにて配信中

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