韓国ドラマはなぜ日本リメイクされやすいのか 大倉忠義主演『知ってるワイフ』を軸に考える

韓国ドラマはなぜ日本リメイクされやすい?

 現在、放送中の『知ってるワイフ』(フジテレビ系、毎週木曜よる10時)は、韓国ドラマのリメイク版だ。2018年に韓国で放送され、出演者とともに人気を集めたドラマである。近年、韓国作品のリメイク版をみる機会が格段に増えた。2019年の夏ドラマでは『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)、『TWO WEEKS』(カンテレ・フジテレビ系)、『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』(テレビ朝日系)と、韓国のリメイク版が一期の中で3作品も放送された。このように、韓国産のドラマが盛んにリメイクされる理由とはなにか、現在放送中の『知っているワイフ』からその魅力を探る。

リアルが呼ぶ共感 「飽きさせない」ストーリー展開とキャラクター設定

 本作の主人公である剣崎元春(大倉忠義)は、結婚5年目で2児の父であり、銀行に勤める普通のサラリーマンだ。仕事で叱咤され、家では妻の澪(広瀬アリス)に怒鳴られ、唯一の楽しみが隠れてゲームをすること。そんな毎日に疲れ果て、人生をやり直したいと思い続けていた。

『知ってるワイフ』ティザー15秒

 この夫婦の背景に、共働きによるすれ違い、ワンオペ育児、親の介護、仕事の昇進といったどこにでも聞かれる問題がみえてくる。つまり、覇気のない目で哀愁漂うサラリーマン元春はあなたで、家事や育児に追われ恐妻と呼ばれる澪はあなたかもしれない。または、「この二人みたいにはなりたくない」と未来の自分を重ねるあなたもいるだろう。

 身近な問題を躊躇なく描くことは、オリジナルでも重要な要素であり、日本リメイク版でも忠実に再現されている。また、どこからみてもダメ男の元春とヒステリックに叫ぶ澪の役柄を、俳優陣は非常にわかりやすく演じている。結婚5年目夫婦のリアルに共感するだけでなく、恐怖まで感じる演出だ。

 そんなある日、元春は謎の男(成瀬勝久)に出会う。そして、「未来は変えられる」と渡された500円でタイムスリップをする。時は、10年前の大学生時代。そこにいたのは、大学の頃に思いを寄せていた沙也佳(瀧本美織)だ。沙也佳がデートに誘ってくれた日であり、未来の妻となる澪と出会う日でもあった、あの日。そこで元春は澪と出会わない選択をし、沙也佳との未来を選ぶ。


 
 誰もが一度は「人生をやり直したい」と思ったことがあるはず。そのifを現実にした、リアルとファンタジーをうまく掛け合わせている点が、『知ってるワイフ』の見どころでもある。誰もが空想したことのある世界と現実の間を行き来する話の展開は、目が離せず、続きが気になってしまう。このように、当然ではあるがドラマを最後まで観てもらうには「飽きさせない」ストーリー展開が必須だ。基本的に全20話前後と、日本と比べて話数の多い韓国ドラマだが、その展開の早さにはグイグイと引き込まれるものがある。日本ドラマは全10話前後のものが多いため、より凝縮された物語のスピード感がドラマの魅力を高めているようにみえる。 

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