若者×シニアのケミストリーが話題 韓国ドラマ『ナビレラ』が静かに感動を誘う理由
「最近の若者は」「これだから昔の人は」。それぞれが聞き飽きているワードではないだろうか。違う時代に生きた者同士が、互いに尊敬し合い補い合えたらどんなに“最強”だろう。Netflixで配信中の『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』で描かれる、夢を前に立ち止まる23歳のバレエダンサーのチェロクと、70歳でバレエに挑戦するシム・ドクチュルの師弟デュオの成長物語が、その世代を越えた“最強”を生み出した。ストーリーの派手さこそないが静かに注目を集め、4月27日に最終回を迎えると、我々の心に大きな余韻を残した。視聴者たちが毎話配信後に口にした、“感動”とは何かを辿ってみる。
本作はウェブ漫画が原作で、2016年から連載を開始して以来、読者から満点評価を記録した人気作品だ。キャスティングについて、原作ファンの期待が大きく難航したなか、原作者のHUN作家も300%満足のキャスティングとコメントを述べた。その1人目は、イ・チェロク役を演じるソン・ガン。彼はいま、韓国で最も人気のある若手俳優だ。『カノジョは嘘を愛しすぎている』(2017年)でドラマデビューし、『恋するアプリ Love Alarm』(2019年)では高校生モデル役で登場、整った顔立ちと186cmのスタイルに、漫画から出てくるような俳優がまだいるのかと認知したのがつい最近。『Sweet Home -俺と世界の絶望-』(2020年)で一転、引きこもりの高校生が仲間を守るため、残忍な怪物に立ち向かう役を演じ、パワーアップする彼の姿にさらに注目が高まる。今回の『ナビレラ ーそれでも蝶は舞うー』では、バレエの練習に6カ月かけて造り上げた体と演技の伸び代の期待を受け、俳優としてまた一段と成長した姿をみせた。
そして70歳のバレエチャレンジャー、シム・ドクチュル役を演じるのは、大衆の心を掴むベテラン俳優パク・イナン。芸歴50年以上、多数の作品に出演したなかで“優しく見守る父親役”の印象が残る。今回初めてパク・イナンを知った人も、ドクチュルをみるとその理由に納得するだろう。HUN作家はパク・イナンについて「平凡な言葉ひとつでも、呼吸まで明確な先生(パク・イナン)の演技が、ドクチュルを超えるものになると信じている」と話す。また、ドクチュルの妻役ナ・ムンヒと演じた夫婦の支え合う様子が、見どころのひとつとなっている。パク・イナンは彼女とこれまで何度も共演を重ね、韓国映画『怪しい彼女』(2014年)では彼がナ・ムンヒに万年片思いをする関係性だったのに対し、今回は夫婦としてその絆を発揮した。
最初から最後まで“今からでも夢を叶えるのは遅くない”と一貫して伝えられたメッセージ
何かに挑戦する人を見ると、不思議と自分もできるかもしれない、やってみようと前向きな気持ちになる。やりたかったことをやって生きている人、またそれを成し遂げた人はどのくらいいるだろうか。ドクチュルのように、好きなことを諦めてきた人の方が多いかもしれない。だからこそ、彼が70歳になって夢に挑戦する姿が、たくさんの人の胸に刺さったと言える。特に、ドクチュルの台詞が心に響いたという感想が寄せられているが、彼の言葉は驚きをくれるようなものではない。そこには、誰かが誰かに言ってほしかった言葉が詰まっている。
物語は対照的な二人が出会うことで始まった。どうしてもバレエがやりたいドクチュルとバレエに打ち込めないチェロク。ドクチュルは幼い頃にバレエダンサーに憧れたが、父親に反対され夢を諦めていた。チェロクは母親を亡くし、父親はチェロクが所属していた高校サッカー部の監督だったが、体罰によって捕まり刑務所から出所したばかり。自分だけやりたいことをやって幸せになっていいのか、前に進めない状態が続いていた。
そんななか、「バレエを習いたい」とやってきたのがハラボジ(おじいさん)のドクチュルだ。チェロクの師匠キ・スンジュの計らいで、ドクチュルにバレエを教えることになったチェロクは「何を今さら」「老人にできるはずがない」と適当にあしらっていたが、ドクチュルのバレエに対する真剣な思いを知り、心を開いていく。