『ハン・ソロ』にある“『帝国の逆襲』オマージュ”の数々 スピンオフならではの作風を読む

『ハン・ソロ』過去作へのオマージュの数々

 劇場公開の時、本作はちょっと不遇な扱いを受けたのではないかと思います。というのも、この半年ほど前に封切られた『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』がファンにとって不評で、新しく始まった『スター・ウォーズ』路線に逆風が吹いていた。また『スター・ウォーズ』のスピンオフとしては『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の出来栄えがあまりに素晴らしかったので、その厚みに比べるとちょっと軽い。正直、僕も劇場公開時には少し物足りなさを感じていたのですが、改めて見直してみると面白い作品だったな。先にも書きましたが“スター・ウォーズ”ということを意識しないで、単独のスペース・アドベンチャーとみれば十分面白い。

 そして“スター・ウォーズ”の中の一つとしてみれば、この作品は『スター・ウォーズ』の中でも名作中の名作とよばれる『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』へのオマージュに満ちています。というのも『帝国の逆襲』は一番ハン・ソロの活躍が目立っている作品だし、『帝国の逆襲』の脚本家ローレンス・カスダンが本作の脚本・製作総指揮を手掛けています。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』で重要な役割を担うは若き日のランド・カルリジアンですが、このランドは『帝国の逆襲』でデビューしたキャラです。『帝国の逆襲』においてハン・ソロとランドの出会いはミレニアム・ファルコン号をめぐるかけひきだったことが語られます。ほんの短いセリフのやりとりでふれられたこの昔話をローレンス・カスダン自らの手で映画化したのが本作といっても過言ではないのでは?

 他にも、『帝国の逆襲』の名セリフである、レイア姫の「(あなたのことを)愛している=I love you」に対する、ハン・ソロの「わかってるよ=I know」を受けて、本作ではランド「お前がきらいだ=I hate you」にハン・ソロが「わかってるよ=I know」と返す、という会話があります。

 またドナルド・グローヴァ―演じる若きランドがハン・ソロとはじめてあった時「ハン?」と彼の名を復唱する時のイントネーションは『帝国の逆襲』でランドを演じたビリー・ディー・ウィリアムズの言い方を真似ているそうです。(これは海外のファンが指摘していました。ただ僕はそこまでネイティブではないので“そうです”と書かせていただきます)

 個人的にはファルコン号を襲う巨大なクリーチャーがツボ。種類は違いますが『帝国の逆襲』にもファルコン号をのみこむ超巨大怪獣が出てきます。僕はこうした怪獣たちの大きさもまた『スター・ウォーズ』の世界観のスケールを語っていると思っています(笑)。ファルコン号のみならなずハン・ソロがあのブラスター(光線銃)、あのお守りの由来、チューバッカとの出会い、なぜ彼をチューイと呼ぶのかなどが描かれます。その一方で今までの『スター・ウォーズ』に登場したジェダイ、フォースは出てきません。最後にハン・ソロたちが向かうのはジャバ親分のところですね。

 ところで、最後に犯罪シンジケート、クリムゾン・ドーン(“真紅の夜明け”って赤をイメージさせる言葉が入っているのがポイント)の黒幕として、ある重要キャラが出てきます。あれ? 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』で“死んだハズ”ですよね? 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』は時系列的に、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の前の話なので、これは矛盾?と思いきや、後に作られたアニメシリーズ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』で彼はサイボーグとして復活しているのです。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』でこの役を演じているのは『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』と同様のレイ・パークですが、声をあてているのは『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』のサム・ウィットワーであり、したがって“『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』の設定”を受けての、今回の登場、というわけです。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる