原点に立ち返った新しい『スター・ウォーズ』 『マンダロリアン』が高評価を得た理由を解説

『マンダロリアン』が高い評価を得た理由とは

 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)よりスタートした、ディズニー主導による新しい『スター・ウォーズ』シリーズ、「続3部作」とスピンオフ映画は、それぞれに多くの観客を集めたビッグプロジェクトだ。しかし、その内容について賛否の声が飛び交っているのも確かである。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年)では、とうとう興行収入が著しく落ちてしまったことから、ディズニーのCEOボブ・アイガーはアメリカのメディアの取材で、「作品をハイペースで製作し過ぎた」と、弱気な発言をするに至った。

 『スター・ウォーズ』シリーズは、このまま下火になっていくのだろうか……。そんな雰囲気が漂っていた2019年頃、配信された『スター・ウォーズ』初の実写ドラマシリーズ『マンダロリアン』は意外にも大きな話題を呼び、ディズニーの『スター・ウォーズ』作品として、最も好評を博することになった。まさにディズニーにとって救いの神である。しかし、なぜ『マンダロリアン』はここまで高く評価されることになったのだろうか。それは、本シリーズが本質的な意味で『スター・ウォーズ』の原点に立ち返った作品となったからではないだろうか。ここでは、その理由を解説していきたい。

 『マンダロリアン』は、全身にアーマーを着たバウンティハンター(賞金稼ぎ)と小さな子どものキャラクターが、『スター・ウォーズ』旧三部作でルーク・スカイウォーカーらが帝国軍の中枢を打ち倒してから5年後の銀河系を旅していくという物語で、2シーズン、16話で構成されている。“マンダロリアン”と呼ばれる主人公の見た目は『スター・ウォーズ』旧三部作や新三部作の一部に登場する、それほど出番の多くない脇役にもかかわらず人気のあるキャラクター、“ボバ・フェット”そっくりだ。それもそのはずで、本シリーズの企画はかなり以前からあり、「ボバ・フェットを主人公としたスピンオフを製作する」という噂がファンの間で話題になっていたのだ。

 本シリーズでボバ・フェット自身が主人公ではないのは、ファンにとって残念だが、彼はもともと装備によって顔を見せることのないキャラクターとして人気を得たため、同じようにアーマーを装備したキャラクターでも応援しやすいという利点がある。『ワンダーウーマン 1984』(2020年)に重要な役で出演するなど、近年ブレイクすることになったペドロ・パスカルが演じる本作の主人公は、光線エネルギーを発射するブラスター・ピストルの射撃であれば耐え得るほどの強靭な装甲と、忍者のように身体中に様々な武器を仕込んでいる武装集団“マンダロリアン”の一員という設定。主人公は、そのために周囲からただ「マンダロリアン」、もしくは縮めて「マンドー」と呼ばれているのだ。

 そして、彼が共に銀河を旅することになった子ども、名前が不明なために、そのまま“ザ・チャイルド”と呼ばれている。視聴者の間では「ベビーヨーダ」とも言われているが、旧3部作や新3部作に登場していたヨーダの子ども時代というわけではなく、同じ種族というだけなのだ。しかし、彼は子どもながらにヨーダを彷彿とさせるような強い“フォース”を持った存在であり、ときにマンダロリアンのピンチを救うこともある。この、アニマトロニクスによって操演されるベビーヨーダの愛らしさも視聴者の評判となった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる