『俺の家の話』最終回のような見事な幕切れ 宮藤官九郎ならではの珠玉のエピソードに

『俺の家の話』最終回のような見事な幕切れ 宮藤官九郎ならではの珠玉のエピソードに

 25年ぶりの家族旅行が始まるやいなや、かつて恋仲にあった女性たちへの“謝罪行脚”を始めてしまう寿三郎(西田敏行)。しかも観山家が経済難にもかかわらず、オークションに出せば100万円の値がついてもおかしくない面をお詫びのしるしと言って渡してしまう始末。そんな波乱に満ちた幕開けとなった2月26日放送の『俺の家の話』(TBS系)第6話。冒頭の寿一(長瀬智也)のナレーションにあった<旅情篇>だけあって、笑あり涙あり、さらには恋模様に歌謡曲までぎっしりと詰め込まれた、珠玉のエンタメエピソードに仕上がっているではないか。

 かつてイタリア公演の通訳として同行し、現在は農業を営みながら夫や子供たちと幸せに暮らしているちはる(田中みな実)の姿を見て、少し寂しそうな表情を見せる寿三郎。さらに水戸でカラオケ喫茶を営む女性の元も訪ね、家族旅行の目的地に着いてからも近所の温泉旅館の女将に会いに行くと言い出す。過去の女性たちと会うたびに落胆した様子の寿三郎を見て、なんとか制止しようとする寿一だったが、「これから会う人もう会えないんだぞ」という寿三郎の言葉に押されるようにして、目的の温泉旅館へと向かうことになるのである。

 今回の劇中で頻繁に使われる「秘すれば花」という言葉は、世阿弥が記した能楽書の『風姿花伝』の中に登場する一説であり、「秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず」と続けられる。簡潔に解釈するならば、“花”とは芸能における見せ場となりうるもののことであり、それは驕り高ぶらない努力によって得られるものであると。つまりは「隠しておいた方がいい」ことであるという点において、劇中における寿三郎の過去の女性関係に結びつくわけだ。また同時に『風姿花伝』が示す芸能における本質的な部分について、寿一たちきょうだいは「潤 沢」のステージを見ながら考えをめぐらしていく。数百年前に綴られた言葉が、かなり汎用性高くこの物語の中に落とし込まれているといえよう。

 それにしても、そのムード歌謡グループ「潤 沢」のメンバー・たかっし役として阿部サダヲが登場したことに触れずにはいられない。言うまでもなく阿部は宮藤官九郎が手がける作品には欠かせない役者であり、長瀬とのタッグともなれば実に16年ぶりになるそうだ。ここに西田も加われば、自ずと『タイガー&ドラゴン』(TBS系)で毎回彼らが繰り広げた他愛もないやりとりが思い浮かぶ。残り数話で、他にも宮藤×長瀬作品にお馴染みの顔がゲスト出演してくれやしないだろうか。

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