『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』失敗作ではない? その賛否両論を考える

『スカイウォーカーの夜明け』の賛否を考える

 続3部作を魅力的にしているのは主人公レイです。女性が主人公ということでダイバーシティに配慮した設定と思われるかもしれませんが、そもそも旧3部作の主役の一人はレイア姫だし、新3部作もアミダラ姫の物語です。『スター・ウォーズ』はその立ち上がりの頃から女性が主役だったし、“姫”でありながら男の助けを待っているようなか弱いヒロインではなく、自らの手で運命を切り開いていくヒロインなのです。レイもまたその流れをくんでいます。この役を演じるデイジー・リドリーの凛々しさと目力がレイにぴったりです。ライトセーバー片手に戦闘機をたたっきるシーンは『スター・ウォーズ』史に残るかっこよさでしょう。

 冒頭『スカイウォーカーの夜明け』は“『スター・ウォーズ』の「ある意味」最終作”と書きましたが、最終作であると同時に新たな『スター・ウォーズ』の可能性を切り開いてくれました。本作で完結するのはスカイウォーカーの物語であり、したがってこれから作られるであろう『スター・ウォーズ』は、スカイウォーカーの呪縛=フォースの呪縛から離れた自由な物になる。実際、スカイウォーカーやフォースの要素を極力排した(けれど絶妙なとりこみ方をしている)スピンオフ映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』やドラマシリーズ『マンダロリアン』は高く評価され、成功を納めています。この路線をベースにした新たな『スター・ウォーズ』ものがこの先作られていくでしょう。個人的に楽しみなのは『ワンダーウーマン』『ワンダーウーマン 1984』の監督パティ・ジェンキンスがメガホンを取る『Rogue Squadron(原題)』=『ローグ・スコードロン(ローグ飛行隊)』。『スター・ウォーズ』世界に存在する戦闘機部隊の活躍を描く宇宙アクションです。『スカイウォーカーの夜明け』は、新たなる『スター・ウォーズ』の夜明けに通じるのです。

 最後に『スカイウォーカーの夜明け』を観る前にいくつかのトリビアを。

1:主人公たちが訪れるある惑星で42年に一度開催されるお祭りというのがでてきます。この42年ぶりというのはちょうど『スター・ウォーズ』と『スカイウォーカーの夜明け』の間の年数です。

2:あまりにも有名な『スター・ウォーズ』のテーマ曲ですが、本作の作曲家ジョン・ウイリアムスがカメオ出演しています。酒場のカウンターにいる右目にアイパッチというかゴーグルをしている白髭の人物です。探してみてください。

3:アニメシリーズ『スター・ウォーズ 反乱者たち』のファンにとってはお馴染みの主人公たちが乗るスペース・シップ<ゴースト>号がチラっと登場します(本当にわずかなのでお見逃しなく)。

4:恐らくシリーズ初の黄色い光のライトセーバーが出てきます。赤い光と緑の光を混ぜると黄色ですが、『スター・ウォーズ』の世界では赤=シス、緑=ジェダイというパターンが多い。この黄色いライトセーバーがどうして出てくるのか? 誰が持つのか? 意味深です。

 繰り返しになりますが、とにかくレイがかっこいい! 観終わったら、彼女のフィギュアが欲しくなりますよ!

■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter

■放送情報
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
日本テレビ系にて、2月26日(金)21:00~23:44放送
※本編ノーカット・テレビ初放送
※放送枠50分拡大
監督・脚本・製作:J・J・エイブラムス
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、アンソニー・ダニエルズ、ヨーナス・スオタモ、ビリー・ディー・ウィリアムズ、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー
(c)2019 ILM and Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる