J・J・エイブラムスの哀しき独り相撲 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』への同情

『SW』エイブラムスの哀しき独り相撲

 J・J・エイブラムス監督53歳、哀しき独り相撲……観終わった後、私はそう思った。面白い/面白くないかで言えば面白かったし、好き/嫌いで言えば好きだ。しかし、それはこの映画『スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)を取り巻いていた様々なトラブルを顧みての想いだ。同情票と言ってもいい。

 もともと新三部作は、3人の監督によるリレー形式の作品と想定されていた。J・Jの仕事は1作目『フォースの覚醒』(2015年)の監督として「スタートダッシュを切って、あとは任せる」。そしてJ・Jはその役割を果たしていた。無限の可能性を秘めた少女「レイ」、自由を求める善良な人間「フィン」、絵に描いたような伊達男の「ポー・ダメロン」、そして善と悪の狭間で揺れる「カイロ・レン」といった、いくらでもキャラクター性を膨らませることのできる上に、それぞれ異なった魅力のある登場人物たちや、次作で便利に使えそうな謎や伏線を多く用意した。スターターとしては見事な仕事をしたと思う。

 しかし……同作後のスピンオフ作品『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年)での監督降板劇、『最後のジェダイ』(2017年)で吹き荒れた賛否両論など、シリーズを取り巻く環境は荒れに荒れ、遂に当初の幕引き役は降板し、再びJ・Jが監督として立ったわけだ。本来なら誰かが巧くオチをつけてくれているはずの話が、むしろ難易度を上げて自分の所に戻ってくる。こんな哀しい独り相撲がありますか?

 こうした混沌としたバックストーリーを踏まえると、どうしても優しい目で映画を観てしまう。冒頭1文字目から致命的なネタバレになるので多くは語れないが、J・Jは自分が最も得意とする話運び、いわゆるマクガフィンを使っての追跡劇として映画をスタートさせる。作りは堅実だ。制限時間があって、その間に手に入れなくてはいけないものがある。登場人物たちは走り、焦り、戦う。細かいサスペンスを入れつつ、J・Jは自分の持ち味で勝負をしていた。キャスト陣も奮闘しており、特にカイロ・レンを演じるアダム・ドライバーは見事だ。彼なしでは映画が成立しなかったんじゃないかとすら思う。そしてカイロ・レンとレイの物語として、物語は辛うじて着地した。J・Jは何とかした、とは思った。

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