猪塚健太が『ポルノグラファー』映画化で大切にした変化 「“一生”を共に歩む覚悟と責任」
丸木戸マキによるBLコミック原作の『劇場版ポルノグラファー~プレイバック~』が、2月26日より全国の映画館にて3週間限定で上映される。
全3部作となる『ポルノグラファー』シリーズは、官能小説家の木島理生と純情な大学生・久住春彦による純愛ラブストーリー。竹財輝之助と猪塚健太をW主演に迎えた実写ドラマは2018年にFODで配信され、史上最速で100万回再生を突破。異例のヒットを受け、理生と吉田宗洋演じる編集者・城戸士郎の過去を描いた2作目『インディゴの気分』も実写ドラマ化された。
そんな大人気シリーズ待望の3部作目であり、最終章となる本作では、ドラマシリーズから引き続き『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』などの三木康一郎監督がメガホンを取り、奇妙な出会いから恋人同士となった木島と社会人として成長した久住が未来について葛藤する姿を美しくも切なく映し出す。
今回は猪塚に、自身が演じる久住の心境の変化やコロナ禍に行われた撮影秘話、役者としての2020年とこれからについて語ってもらった。(苫とり子)【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「竹財さんにはつい甘えちゃいます(笑)」
――今回、『ポルノグラファー』の映画化が決まった時の率直な気持ちを教えてください。
猪塚健太(以下、猪塚):一つの役を長く演じることができて、それが続編で完結って、役者としてこんな光栄なことはないです。ドラマの時からずっと応援してくださっていた方々の声が届いたという意味でも心の底から嬉しかったですね。
――前作から約2年という月日が経っていることもあり、同じ役を演じる上で不安や戸惑いなどはありませんでしたか?
猪塚:やっぱり期間が空いている分、作品の雰囲気や空気感を忘れている部分もあって。一人で台本を読んでいる時は前作を思い出しながら役を作っていたんですが、現場でテストが始まった瞬間にスッと役に入ることができたんですよね。竹財さんをはじめ共演者のみなさんの力をお借りして、「こんな感じ、こんな感じ」って記憶を取り戻しながら楽しく撮影できました。
――ドラマは木島と2人だけの会話が多かったと思いますが、今回はたくさんの方が出演しているので、撮影も賑やかだったのではないでしょうか。
猪塚:賑やかでしたし、一気に世界が広がりました。本作で松本若菜さんが演じる春子と、奥野壮さん演じる静雄の明実親子がすごく重要なキャラクターで、良い感じに春彦と理生さんをかき回してくれます(笑)。物語の展開としてはドラマと似ているところもありますが、他の人物が入ることで2人の姿を俯瞰して見ることができるんですよね。撮影中はもちろん、完成した作品を観ている時も楽しかったです。
――久しぶりの共演となる竹財さんとも、すんなり波長を合わせることはできましたか?
猪塚:違和感はまったくなかったです。確かにドラマを撮影し始めた当初は、もちろん先輩ですし気を遣っていた部分もありましたが、今回は最初からすごく良い雰囲気のなか撮影できました。
――2人がSNSにあげている2ショットや、竹財さん目線で撮影した猪塚さんのプライベートな動画などから、仲の良さが伝わってきます。
猪塚:竹財さんは兄貴的な存在なんです。面倒見が良くて、すごく可愛がってくれるからつい甘えちゃいます(笑)。
――撮影の合間にはどんなことをお話しされているんですか?
猪塚:なんだろう……たわいもないことですかね。竹財さんはずっとやっていなかったSNSを『ポルノグラファー』のドラマ放送後に始めたんですが、趣味が多い方でよく自分が作った料理の写真を投稿してたりするんですね。僕は趣味がない人間なので、そういうのを見て「こないだの美味しそうなあれ、本当に自分で作ったんですか?」とか興味深々に聞いたりします(笑)。逆に、お芝居の話とかは撮影前にしないんですよ。
――そうなんですね! いつも息の合ったやりとりを披露しているので、2人で事前に細かく動きなどを相談されているのかと思っていました。
猪塚:基本的にリハで段取りだけを確かめ合ってから本番、という感じで。ただ絡みのシーンでは押し倒したり、服を脱がせたりと動きが細かいので、そこは話し合って2人で決めています。特に映画の撮影は自粛明けからスタートしたので、濃厚なキスシーンなんかは何度も試すことができなかったんです。だから念入りに打ち合わせをした状態で、一度の撮影に集中しました。
――自粛明けということは、撮影する上でかなり制約があったのではないでしょうか。
猪塚:春彦と理生さんは身体も心も近くなきゃいけないのに、フェイスガードを着けていると物理的に距離が空いちゃうので……。そういう意味で苦労した部分は多かったですね。スタッフさんも気遣う部分が多くて大変だったと思います。
――絡みのシーンだけではなく、今回は木島と久住がぶつかるシーンもすごく多いですよね。久住は怒ったり、喜んだり感情が豊かな分、演じる猪塚さん自身も気持ち的に辛そうだなと思いました。
猪塚:正直しんどかったですね。実はスケジュールの関係で、春彦が理生さんに対して気持ちを爆発させるシーンの撮影がまとまっていたんです。だから一日に何度も理生さんと喧嘩していて、かなりボロボロになりました(笑)。今回の撮影はカンヅメ状態だったので、集中できて助かりました。豊橋で撮影したんですが、僕は愛知県出身だから実家も近いし、落ち着く空気感で。時期的に撮影終わってみんなでご飯というわけにもいかず、ただホテルと現場の往復でしたけど、ストレスはなかったです。
――今回は『續・ポルノグラファー プレイバック』を原作としていますが、世界観を引き継ぐ上で、気をつけた点はありますか?
猪塚:『ポルノグラファー』の台本に初めて目を通した時に、セリフもかなり原作に忠実で全6話という話数も単行本の章とリンクしていたので、間違いなく原作を大切にすればうまくいくなと。その上でドラマはドラマの雰囲気があるので、セリフは同じでもテンションやリアクションを原作に寄せすぎないようにしました。ただ今回の映画は原作の落とし所がドラマとは異なり、原作通りに演じると三木監督の脚本には合わないと思ったんです。特に喧嘩のシーンは台本をかなり重視して、映画として楽しめる作品にするために原作よりもシリアスなムードで演じました。
――三木監督からはどんなアドバイスがありましたか?
猪塚:前作がドラマだったのでテンポよく演じてしまっていたんですが、三木監督が撮影中に「そんなに早くやらなくていいよ。映画みたいなテンションで、自然と言葉が出てくるまで間を使っていいから」と言ってくださったんです。その雰囲気のまま映画の撮影に臨んだので、三木監督の言葉を思い出しながら丁寧に演じることができました。