冬ドラマは人気脚本家のオリジナル作が充実! 再タッグ組と初顔合わせ組、それぞれの見どころは?
来週から本格的にスタートする1月クールの連続ドラマ。今期は、脚本家のひとつの到達点である朝ドラや大河ドラマを執筆した有名シナリオライターのオリジナル作品がそろっている。2020年からのコロナ禍を経験し、またその最中にある作家たちが描き出すのはどんな人間模様なのか。初回のあらすじをチェックしたところ、主題としてコロナ禍を描くものはないが、家族や疑似家族の関係を見つめ直す内容が多く、困難な時代だからか、ホームドラマ回帰の傾向が見られる。また、脚本家と主演俳優の組み合わせは、長年組んできた同士でまた組む作品と初めての組み合わせで挑む作品に分かれた。ドラマファンの注目を集めているものを中心に紹介していきたい。
まずは『あまちゃん』『いだてん~東京オリムピック噺~』(ともにNHK総合)の宮藤官九郎が民放で3年3カ月ぶりに手掛ける連続ドラマ『俺の家の話』(1月22日スタート/TBS系)。制作は21年前の連ドラデビュー作『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)からコンビを組んできた磯山晶プロデューサーで、演出は同じく金子文紀。主演はやはり『池袋―』以来、ドラマや映画で5度組んでいる長瀬智也が主演という、おなじみのチームだ。
物語は、長瀬演じる42歳のプロレスラー・観山寿一(読み:みやまじゅいち)が、脳梗塞で倒れ要介護となった父親・寿三郎(西田敏行)の世話をするため、25年ぶりに実家に戻り父や弟妹たちと共同生活を送るというもの。寿三郎は能楽の人間国宝で、その跡は弟子の寿限無(桐谷健太)が継ぐと思われていたが、元々、能楽の天才的センスがあった寿一はレスラーを辞め、宗家を継ぐと宣言。そして、寿一の息子や、突然、寿三郎の婚約者として現れた美貌の介護ヘルパー・さくら(戸田恵梨香)らも観山家に出入りし、血縁者と他人が入り乱れて、にぎやかなホームドラマが展開する。
西田敏行が伝統芸能の師匠で、長瀬智也がその伝統を継承しようとするという設定は、一見、落語の世界を描いた『タイガー&ドラゴン』(TBS系)の焼き直しのような印象も与えるが、介護という新しい要素を盛り込んできたのはさすが。リングで対戦相手をホールドしてきたレスラーが、実家で動けない父親を持ち上げることになるわけだ。寿一の息子には学習障害もあり、親子三代の関係を通して他者と助け合う必要がある現代社会の悲喜こもごもを描く、クドカンの新境地となりそうだ。
今回、クドカンワールド初参戦となるのは、寿一の妹を演じる江口のりこ(連ドラ連続出演3クール目!)、その夫役の秋山竜次(ロバート)、道枝駿佑(なにわ男子)ら。既に独自の世界を持つ秋山がコメディリリーフとしてここに馴染むのかにも注目したい。
次に気になるのは、日曜劇場『天国と地獄~サイコな2人~』(1月17日スタート/TBS系)。『ごちそうさん』『おんな城主 直虎』(ともにNHK総合)の脚本家・森下佳子と組むのは綾瀬はるかで、こちらも『義母と娘のブルース』(TBS系)に続いて実に6回目のタッグに(『MR.BRAIN』を除く)。綾瀬演じる刑事の彩子と、高橋一生演じる殺人鬼の陽斗(読み:はると)の魂が入れ替わってしまうという異色の設定。既にティーザーとして“高橋一生っぽくサイコパスな笑みを浮かべる綾瀬はるか”“その綾瀬の狂気に怯える、綾瀬はるかっぽい高橋一生”というキャッチーな場面が流れ、注目を集めている。実はモノマネのような演技をノリノリでやる人でもある綾瀬のコメディエンヌ魂が全開になりそうだ。
脚本の森下は2020年にリモートドラマ『今だから、新作ドラマ作ってみました』第3夜「転・コウ・生」(NHK総合)で、柴咲コウとムロツヨシと高橋一生の魂がトリプルで入れ替わるというスイッチものを書いており、ライトノベルでも人気のジャンルを開拓しようとしている感アリ。ただ、「もしかして私たち、俺たち、入れ替わってる!?」というつかみはOKなのだが、単発の「転・コウ・生」と違って連続ドラマなので、その後、どう展開していくのかは難しいところ。もしかしたら、後半はストーリーががらりと変わり、その後半にこそ本来描きたかったテーマが出てくるのかもしれない。