森下佳子、坂元裕二、岡田惠和はコロナ禍をどう描いた? 名脚本家たちが描く短編ドラマの心地よさ

森下佳子、坂元裕二、岡田惠和はコロナ禍をどう描いた? 名脚本家たちが描く短編ドラマの心地よさ

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が2020年4月6日から発せられたことによって、7日以降、映画やドラマがのきなみ撮影休止になった。いつまで続くかわからない活動自粛に、そのまま静かに休んでいるわけにもいかないクリエーターや俳優たちは、続々とリモートで作品を製作した。製作期間が短いため、主に新人脚本家を起用していくかと思いきや、森下佳子、坂元裕二、岡田惠和などヒットメーカーが続々作品を発表。ドラマファンを喜ばせた。

森下佳子「転・コウ・生」

 いち早くリモート(テレワーク)ドラマを放送したのはNHKで、『今だから、新作ドラマ作ってみました』というシリーズ名で各30分の新作ドラマを3作連続で発表。森下佳子の「転・コウ・生」は3作目のトリ(5月8日放送)を担った。出演は、柴咲コウ、ムロツヨシ、高橋一生という森下佳子作の大河ドラマ『おんな城主 直虎』の出演者たち+白い猫だ。

 『今だから、新作ドラマ作ってみました』の1作目はコロナ禍で自粛している男女がリモートで会話するオーソドックスなリモート会話劇(作・矢島弘一)。俳優それぞれのいる場所にカメラを設置しオンラインでやりとりしている画面をリアルに見せたライブ感のあるものだった。2作目は、同じく男女のリモート会話劇(作・池谷雅夫)だが、ふたりの置かれている状況を少しひねってファンタジー風味が加わった。

 そして、3作目の森下は、柴咲とムロの心とカラダが入れ替わるというタイトル通りの展開のファンタジー。柴咲とムロが自分じゃない人を演じる可笑しさ(ふたりのお互いのマネが巧い。コメディを演じる柴咲が新鮮)で引っ張りつつ、途中、高橋一生と柴咲のネコまで入れ替わってしまう。ドタバタコメディながら、『直虎』のほか森下ドラマの朝ドラ『ごちそうさん』にも出演したムロツヨシが4月7日から毎朝はじめたインスタライブ「8時だョ!湯呑でコーヒー」まで盛り込んだ圧倒的なリアリティー(高橋が柴咲を「殿」と呼ぶことも『直虎』ファンにはたまらない)で、それによって、テレビのなかの演者をリモートでつなぐのみならず、テレビと視聴者もつないだように感じた。また、入れ替わりという不条理と寄り添って生きていく登場人物たちのさわやかな諦念は、観た者がコロナ禍という不条理下で生きていくことそのもの。自粛から1カ月で、30分の短編とはいえ、リモート撮影という条件のなか、エンタメ性とメッセージ性を過不足なく書き込んだ完成度はさすがで、リモートドラマ3作のトリとして十分なものだった。

坂元裕二『Living』

 NHKはさらにリモートドラマを進化させる。『Living』というシリーズ名で、坂元裕二が15分の短編を4作書き下ろした。遠隔の会話劇を画面分割で見せるというスタイルを廃し、同じ家に住んでいる芸能人夫婦や姉妹、兄弟による二人芝居というアイデアを提示してきた。リモートなのは、演出や撮影作業だけで、美術も飾りこまれ、カット割りも十二分にされて、言われなければリモートなのかわからない、ふつうのドラマになっていた。

 広瀬アリスと広瀬すず姉妹の物語、永山瑛太と永山絢斗兄弟の物語が5月30日に放送。中尾明慶と仲里依紗夫婦の物語、青木崇高と優香夫婦の物語が6月6日に放送された。二人芝居が4本ではなく、最後の4話目は、青木演じる夫は微熱が出たためひとり隔離されているというひねりを効かせてくる。さらに、各回、阿部サダヲ演じる作家とドングリ(声:壇蜜)のやりとりがあって、4本の物語はこの作家が書いたものという設定になっている。4本を別々に楽しむこともできるし、1本まとまった合計1時間のドラマとしても楽しめる。

 坂元の『Living』に登場する各話ふたりの人物は、一見、部屋のなかで時間つぶしをしているように見えるが、じょじょに彼らがまるでノアの箱舟に生き残った者たちのように見えてくる。描かれない外の世界には死のニオイまで感じるようで、リモートドラマ=閉ざされた日常のドラマという先入観を一気に覆し、不思議に広大な世界観を漂わせた。作家とドングリが単なる狂言回しでない意外性もあって、こんな凝って洒落た短編小説みたいなこの作品を坂元は何日くらいで書き上げたのだろう。

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