新春は韓国産ゾンビ作品がうってつけ? 『#生きている』『キングダム』など話題作を一挙紹介

 あけましておめでとうございます。新年を迎えるたびに、まるで“再生”するかのように気持ちを改めて、今年こそ肉体改造してやろうとか、語学を習得しようとか前向きな気持ちになります。昨年がどんなに腐りまくっていたとしても、オーケー。ゾンビのように不屈の精神で頑張っていきましょう! さて、2021年1月1日から『新感染半島 ファイナル・ステージ』が公開されています。前作、『新感染 ファイナル・エクスプレス』はまさかの“泣けるゾンビ映画”として世界各国で高い評価を受け、日本でも相当話題になりましたね。本作はその続編なのですが、新春ってゾンビ映画が本当に向いているのです。

韓国ゾンビ映画=最高のエンターテインメント

 まず、ゾンビ映画は起承転結がものすごくハッキリしていて、しっかり展開があります。感染者が出てきて、主人公たちは対策を講じ、仲間の誰かが噛まれて、涙ながらにそれを殺し逃げ切る、というのが王道。でも、王道って最も安心して観ていられるジャンルではありませんか? しかも、大概は2時間以内に終わる。そこまで長尺ではなく、ハズレをひく確立が圧倒的に低いのがゾンビ映画。なにせ、そもそもB級作品の多い畑です。逆にそれが良い味わいを出して、だからこそ思い切ったものを作れるわけでもある。

 そしてゾンビ映画は映画好きな人が映画に求める全てを集約しています。ホラー、アクション、スプラッターは表立っていますが、結局当事者になるのは人間。生死をかけた極限状態のなかで、恋が生まれたり(ロマンス)、家族を守ったり(ファミリー)、その場に居合わせた人たちが協力する上でパンデミックが起きる前の身の上話を始めたり(ヒューマンドラマ)。何よりゾンビ映画の起源は社会風刺という側面もあるので、もうエンタメ全部乗せも良いところです。築地で食べたら5000円はします。

 特に、韓国製ゾンビ映画のレベルが高い。もともと欧米で生まれたこのジャンルを韓国特有の社会問題に絡めたり、歴史に絡めたり。これまで何作品も作られてきたゾンビものに、新しさを持たせているのです。欧米側が近年、全部乗せを怠ってコスト低めの作品を量産する回転寿司スタイルになっているのに対し、韓国側は全部乗せ、しかも世界的に共感できる内容(特上)でやっているわけです。そんな、近年クオリティが高いことで注目を浴びるいくつかの丼、もとい韓国ゾンビ映画を紹介したいと思います。

『新感染』の前日譚『ソウル・ステーション/パンデミック』

『ソウル・ステーション/パンデミック』(c)2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.

 本作はあの『新感染』の物語が始まる直前を描いた、前日譚。アニメーション映画だからとあなどってはいけません。実写映画と同監督ヨン・サンホが手がけていて、正直『新感染』よりもストーリーとテーマ性に重みがあります。なぜ、あのパンデミックが起きてしまったのか。その発端は1人のホームレスの老人でした。彼がソウル駅前で大怪我をしていて、痛み止めをくれと周りの人に訴えるわけですが、誰も相手にしてくれない。この時に駅員が面倒を見てあげていたらどうなっていたのか。そこに、お金に困っている家出少女のヘスンや彼女の彼氏、父親が登場してメインキャラクターとして活躍します。

 韓国は『パラサイト 半地下の家族』のように格差社会をテーマにした作品が多く、本作でもホームレスを見捨てる日常や、家出した女の子が風俗嬢として働いているという社会問題に触れています。

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