のんの“新たな一面”を引き出した大九明子監督の演出術 『私をくいとめて』の裏側を語り合う

のん×大九明子『私をくいとめて』の裏側語る

 のんと林遣都が共演する映画『私をくいとめて』が12月18日より公開中だ。綿矢りさの原作小説を、『勝手にふるえてろ』に続き大九明子監督が再びメガホンを取り映画化した本作。脳内に相談役「A」を持つ、おひとりさまライフを満喫中の31歳・黒田みつ子は、年下の営業マン・多田くんに恋をしてしまったことから、20代の頃のように勇敢になれない自分に戸惑いながらも、一歩前へ踏み出そうとする。

 リアルサウンド映画部では、今回が初タッグとなったみつ子役ののんと大九監督にインタビューを行い、お互いの印象や現場でのやりとりについて語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

のん「私にとっても挑戦だなと思いました」

ーーのんさんと大九監督の組み合わせはかなり意外でした。みつ子役にのんさんというのはプロデューサーの方のアイデアだったそうですね。

大九明子(以下、大九):どういう人にみつ子を演じてもらったらいいかを全く考えず、先にシナリオを書き上げたんです。それから誰にみつ子を演じてもらうのがいいんだろうと考えていたら、プロデューサーがのんさんを提案してくれて、「うわ、ぴったり!」と。みつ子は会社や日々の暮らしの中のどこにでもいるような存在だと思うんです。のんさんは実際にお会いするとすごく輝いていますが、いくつか出演された作品を拝見していた中で、いざ映画に入ってしまえば、どこにでもいそうな普通の雰囲気を醸し出せると思っていたので、みつ子役がハマると思いました。自分が書き上げたシナリオにのんさんがぴったりだったことが大きかったですね。それと、これまでに見たことのないのんさんが見られるというワクワク感もありました。

ーー「こういう人に演じてもらえたら」というイメージもなかったんですか?

大九:それが全くなかったんです。ただひたすら楽しみながらシナリオが書けてしまったので。私の中で唯一決まっていたのは前野(朋哉)くんだけです。「前野くんのスケジュール早く抑えて!」って言っていたくらいでした(笑)。

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ーー大九作品といえば前野さんですよね(笑)。のんさんは大九監督の作品をご覧になっていましたか?

のん:はい、拝見してました。女性のダメなところやズルいところなど全てをさらけ出して、しかもそれをすごくチャーミングに描いている。登場人物を愛おしく撮ることができる、すごく素敵な監督だなと思っていました。

ーーそんな大九監督の作品世界の中に入っていく気持ちはいかがでしたか? みつ子はのんさんが今まであまり演じてこられなかったようなタイプの役柄でしたが。

のん:そうですね。みつ子は、今まで私がやってきた役と比べると、より感情が揺さぶられているキャラクターです。人前では感情を抑えていますが、「A」と喋っているときや、1人になったときにドバーッと感情を激しく出す役だったので、ある意味、私にとっても挑戦だなと思いました。

大九:実際、のんさんは自分の中できっちりとみつ子を作り上げてくれました。演出行為としての微調整はもちろん行いましたが、私がイメージしていたみつ子と近かったです。ただ、どうしてもやってもらわなきゃいけなかったのが、31歳として、多田くんよりお姉さんであること。そこに関しては、のんさんがちょっとかわいらしくぴょんぴょんぴょん走ったりしちゃったときに、「もうちょっと肘を曲げて走ろうか」とかは言いました(笑)。

ーーそう、のんさんは現在27歳ですが、みつ子の設定は31歳。しかも実際は年上の林遣都さんが年下の設定だったんですよね。

のん:そこが難しかったんですよね。走り姿は本当に焦りました。そういう仕草とかがもともと子供っぽいところがあるので、お芝居をするときにもちょっと素が出ちゃって、「あ、すみません!」って感じでした(笑)。でも、林さんがすごくリアルに年下の多田くんとして返してくださるので、私もみつ子として“年上面”しやすくはありました。

ーーのんさんは撮影前や撮影中に、疑問に思ったことなどを大九監督に積極的に聞いていたそうですね。そのあたりのやりとりは具体的にどのようなものだったんでしょう?

大九:例えば、衣装合わせが終わった後に、「部屋着ってもっとこういうのだと思っていました」と言われて、自分にはその選択肢がなかったことに気づかされるというか。過去の作品では、このキャラクターはこういう家族構成で……というように、それぞれのキャラクターのバックグラウンドを書いて実際に演じてもらう俳優さんに渡していたりもしたんです。ただ、今回はあえてそれをしなかったので、のんさんに限らず、キャストの皆さんは何か気になることがあれば私に聞きに来てくれました。そうやって実際に質問してくれると、それまでは自分も言語化していなかったけど、答えているうちに自分の中でも理解が深まっていくことがあったので、一つひとつのやりとりが私にとってもすごく貴重でしたし、ありがたかったですね。

のん:衣装合わせもそうですが、台本や原作から読み解ける部分で疑問が出てくると、そのわからないところはなくすようにしているんです。現場で生まれてくるものや現場で発見することもたくさんあるんですけど、事前にある程度自分の中に馴染ませておかないと、いざ本番になったときに自由に動けなくて。走り方はちょっとできませんでしたが(笑)、この役だったらどう動くんだろうみたいなことは事前にきっちり考えて、常に本番でわからない部分がないようにすることは意識しています。

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