及川光博は“日常と非日常”を成立させる俳優だ 『#リモラブ』で体現する大人の恋模様

及川光博は“日常と非日常”を成立させる俳優だ 『#リモラブ』で体現する大人の恋模様

 主役としてバリバリ前に出るわけではないが、この1年で3作のヒットドラマに出演し、替えがきかない存在感を示すプレイヤーがいる。

 及川光博だ。

 現在O.A.中の『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)では、人事部・朝鳴部長として“昭和ラテン”なアラフィフを好演。また、今年1番の話題作となった『半沢直樹』(TBS系)では、2013年に続いて半沢と同期入社の渡真利忍を演じている。さらに、1年前に放送された『グランメゾン東京』(TBS系)では、木村拓哉演じる天才シェフを支える料理人・相沢瓶人として華麗な手さばきを魅せた。

 ここでは俳優・及川光博について考えてみたい。

 俳優としての及川を振り返る際、避けて通れないのが『相棒』(テレビ朝日系)だろう。及川は2009年から2012年まで警視庁特命係・杉下右京(水谷豊)の二代目相棒として神戸尊を演じ、その名を幅広い世代に知らしめた。特命係を去ってからも、折々の事件で右京と協力関係を築いている“元相棒”は神戸1人である。

 『相棒』レギュラー卒業の翌年、2013年版『半沢直樹』に渡真利忍役で出演。半沢(堺雅人)の同期であり、人脈と銀行内外の情報とを手中に収める渡真利は、ことあるごとに半沢を陰からサポートし、彼の窮地を救う親友だ。

 『相棒』の神戸と『半沢直樹』渡真利の共通項は「振り回され型」のキャラクターであること。『相棒』でいえば、初代の相棒、亀山薫(寺脇康文)や三代目の甲斐享(成宮寛貴)は右京と正反対の直情型×行動派。それに対し、及川が演じた神戸は、元々スパイとして特命係に送り込まれたこともあり、自ら率先して事件に飛び込むことは少なかった。右京の“勘”に対して「面倒なことに首を突っ込まなくていいのに」という空気を醸すことも多々あったと記憶している。

 また『半沢直樹』の渡真利も、同期の半沢や近藤(滝藤賢一)のために情報を集め、彼らにそれを提供する役どころ。自分が渦中に身を投じることはなく、コトが起きた時にふと現れ、少々かき回されながらも陰から事態の収束に協力する立場であった。

 自身が40代に入る2009年から2013年にかけて、及川が神戸と渡真利という「振り回され型」のキャラクターを高視聴率ドラマで演じ、いずれも好評を得たことが、今の彼の俳優としての立場を決定づけたと考える。なぜなら、この年代で及川のような空気感を醸せる俳優は希少だからだ。

 主演とは違う位置に立ち、コンスタントにドラマ出演を続ける40~50代の俳優で、もっとも目立つのはいわゆる小劇場出身の人材。彼らは個性的で演技力もあり、アドリブにも強い。例を挙げると古田新太、阿部サダヲ、大倉孝二、橋本じゅん、八嶋智人といった非常に濃い面々だ。そんなクセが強めの俳優陣の中で、及川の生活感のなさや、51歳には見えないビジュアルは逆に目立つし、銀行や警察、病院、製紙会社と、どの場面でもスーツや白衣を着こなし、スっとその場に溶け込めるキャラクターは貴重。どんなシチュエーションにも自然にマッチし、なおかつ存在感をしっかり現す……及川光博のドラマでの佇まいは透明な水のようである。

 また、これだけ整ったビジュアルを保ちながら、彼がこれまでドラマでは恋愛面での役割をほぼ担ってこなかったことも面白い。『グランメゾン東京』で及川が演じた相沢は、フランス人の妻と離婚したシングルファザーという設定だったが、その想いは元妻ではなく、手放すことになるかもしれない娘に向かっていたし、『半沢直樹』の渡真利も既婚者らしいが、プライベートは明かされていない(余談だが、9月に放送された『生放送!!半沢直樹の恩返し』で、及川自身が「じつは渡真利は半沢にしか見えない妖精かも」と語っていたのがツボだった)。

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