大貫勇輔、山崎育三郎、古川雄大ら、映像作品でも活躍の幅を広げるミュージカル俳優たち
新型コロナウイルスの世界的流行という未曾有の事態が発生した2020年も、残すところあと2カ月となった。今年はライブやイベントなどの相次ぐ中止・延期や、ドラマ・映画の撮影休止など、エンタメ業界全体が苦戦を強いられた。中でも、大勢の人が集まる舞台やミュージカルの公演は自粛の対象に。音響や照明など、裏方の仕事に就くスタッフだけではなく、ステージをメインに活動中の役者も苦しい思いをしたことだろう。けれど同時に、2020年はNHK連続テレビ小説『エール』をはじめ、ミュージカル俳優が映像作品で目覚ましい活躍を見せた1年でもある。
まずは『エール』でも共演を果たし、2021年4月からミュージカル『モーツァルト!』でWキャストを務める山崎育三郎と古川雄大。日本のミュージカルは大きく、劇団四季、宝塚歌劇団、東宝・ホリプロ系、2.5次元の4種類に分けられるといえるが、2人は主に東宝製作のミュージカルを牽引する存在だ。
どちらもミュージカル歴は長く、山崎にいたっては小椋佳企画の“アルゴミュージカル”に出演した12歳から。古川は2.5次元舞台の代表的作品であるミュージカル『テニスの王子様』に出演した後、ミュージカル俳優の登竜門と呼ばれる東宝版『エリザベート』のルドルフ役を勝ち取り、グランドミュージカルの道へと歩み始めた。山崎は“ミュージカル界のプリンス”、古川は“ミュージカル界の新プリンス”と称されるように、2人とも目を惹く華やかさがある。そのため、たとえメインキャストではない映像作品でもその存在感はひとしお。
『エール』ではどちらもコミカルな要素を担っているが、どんなにボケても失われないあの上品さは一体何なのか……。歌声を披露する場面はもちろんお手の物で、2人が居酒屋で「船頭可愛いや」を歌唱した第13週や、山崎演じる久志が甲子園のマウンドで「栄冠は君に輝く」を披露した第20週は大きな話題となった。
また、音楽がテーマの『エール』には山崎と古川以外にもたくさんのミュージカル俳優が出演している。心臓に病を抱えながらも、最後まで音(二階堂ふみ)が過ごした豊橋の実家を見守り続けた岩城役を好演した吉原光夫は元・劇団四季の団員。2011年には、帝国劇場開場100周年記念公演『レ・ミゼラブル』で史上最年少となる32歳で主人公ジャン・バルジャン役に選ばれたことも世間を賑わせた。2021年には同じく『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャンを演じることが決定。無事に上演されたら、これで6度目の主演ということになる。舞台で映える体格の良さは映像でも活かされ、一見強面だが時折見せる笑顔が優しい岩城を吉原は全身で体現していた。