大貫勇輔、山崎育三郎、古川雄大ら、映像作品でも活躍の幅を広げるミュージカル俳優たち

　さらに、吉原とは『レ・ミゼラブル』や劇団四季『ライオンキング』で共演した海宝直人も今年の注目株。先日は2021年1月上演のミュージカル『The Illusionist -イリュージョニスト-』で今年亡くなった三浦春馬の代役を務めることが発表され、注目が集まった。彼は子役時代から劇団四季や東宝系のミュージカルで幅広く活躍しており、2018年にはロンドンのウェストエンドで舞台デビュー、同年にポーランドでの海外コンサートを開催するなど世界でもその歌声が評価されている。

　『エール』では、夫のコネでオペラ『ラ・ボエーム』の主演に選ばれた音に苛立ちを覚え、厳しく注意する伊藤幸造役を熱演。作中でその美声を披露し、1週のみの出演でありながら強い印象を残した。そんな彼に圧倒された音を静かに見守った、かつてのライバル・千鶴子を演じた小南満佑子もミュージカル畑の女優だ。彼女は幼い頃から声楽を習っていたこともあり、過去数々のコンクールで賞を受賞している抜群の歌唱力を持った実力者。作中で披露した本格的なオペラのアリアも見事なものだったが、同様に千鶴子役で見せた表現の豊かさも印象に残っている。音のライバルとして時に厳しいことも言う彼女だが、終盤ではすっかり穏やかな表情に変わり、第21週において音が歌を披露した場面では目を潤ませる一幕もあった。

　今期は『ルパンの娘』（フジテレビ系）でも、前作に引き続きミュージカルを中心に活動するダンサーの大貫勇輔が活躍中。大貫は会話の最中についミュージカル調になってしまうというユニークなキャラクターを演じており、彼が出演する場面はテレビ画面がステージに変わったかのような印象を受ける。

　また、特筆すべきは彼らミュージカル俳優が映像作品に進出し始めたのと並行して、城田優や小池徹平など、これまでは映像作品に出演してきた役者が活動の幅を舞台やミュージカルへと広げているということ。さらには菅田将暉、北村匠海、森七菜、上白石萌音といったアーティストとしても活躍する俳優が増えてきた点も見逃せない。表現の場を超える彼らの存在は“映像とミュージカル”という2つの世界をつなぐ架け橋となるだろう。

　最後にこれから映像作品でも活躍しそうなミュージカル俳優を挙げるとするならば、井上芳雄、浦井健治、黒羽麻璃央、矢田悠祐といったところだろうか。井上と浦井は山崎と共に、“ミュージカルの三代プリンス”と呼ばれている。

　どちらもドラマや映画への出演経験はあるが、山崎の『エール』における活躍ぶりを受けて今後彼らが映像作品でメインを張ることもあり得る。また、黒羽と矢田はミュージカル『テニスの王子様』の出身者だ。テニミュ卒業後も2.5次元以外に、東宝系にも出演している彼らは何より若い世代からの人気が高い。黒羽はバラエティやドラマでも頻繁に姿を見るようになったが、矢田に関しては映像作品未経験。だがテニミュ出演時の段階でスペックの高さが目立っており、テニミュの“先輩”でもある瀬戸康史や志尊淳のように誰もが知る俳優になる日も近いだろう。いずれにせよ歌って踊れて、なおかつ確かな演技力も兼ね備えている彼らは映像作品でも重宝されるはずだ。

■苫とり子
フリーライター／1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日（月）～11月28日（土）予定（全120回）
※9月14日（月）より放送再開
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演：窪田正孝、二階堂ふみほか
写真提供＝NHK
公式サイト：https://www.nhk.or.jp/yell/

木曜劇場 『ルパンの娘』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00～放送
出演：深田恭子、瀬戸康史、橋本環奈、小沢真珠、栗原類、どんぐり、藤岡弘、（特別出演）、松尾諭、大貫勇輔、信太昌之、マルシア、我修院達也、麿赤兒、渡部篤郎
原作：『ルパンの娘』 『ルパンの帰還』 『ホームズの娘』 横関 大（講談社文庫刊）
脚本：徳永友一
プロデュース：稲葉直人
監督：武内英樹
制作・著作：フジテレビ 第一制作室
(c)フジテレビ
公式サイト：https://www.fujitv.co.jp/Lupin-no-musume2020/
公式Twitter：@lupin_no_musume
公式Instagram： @lupin_no_musume