『#リモラブ』が描く現代社会の恋模様 “日常”を持ち込む松下洸平の持ち味が生かされた形に

『#リモラブ』が描く現代社会の恋模様

 さて、本題の美々先生の恋愛事情である。男性を食べ物に例える癖のある美々は「極上のステーキ」を求めていたのにも関わらず、SNSの世界において、顔も名前もわからない誰かに恋をしてしまう。寝る前5分、起きて5分の他愛もない会話をアカウント名「草モチ」として「檸檬」とやり取りを交わす中で、2人はまだ会ってもいないのにかけがえのない存在になってしまった。第3話以降、物語は、同じ社内にいるはずの「檸檬捜し」から、心だけ先に親密になった相手と、実際に恋に落ちることができるのか問題に移行した。

 檸檬と草モチのやり取りは本当に魅力的だ。相手のことを知らず、身体に触れなくても、彼女が嫉妬するほど、「心を繋ぐ」ことはできる。

 その一方で、ドラマは、朝鳴の子供である保(佐久間玲駈)というデジタルネイティブの言葉を通して警鐘を鳴らす。「SNSでの出会いはきっかけに過ぎないから、現実の世界でちゃんと向き合わないと愛は育たない」と。

 その言葉の通り、オンラインゲーム、SNS、配信動画、喋る家電と、新しい生活様式をとことんまで組み込むことで快適に生きている美々は、現実の恋愛とちゃんと向き合おうとするだけでどこまでも疲弊し、「面倒くさい」と思わずにいられない。SNSでのやり取りは、互いの顔が見えない分、想像によって補われ、過度に美化される。5分限定のトークタイムは、忙しいアラサー社会人にとって何よりも都合がよく負担にならない手段だ。また、その気になればいつでも関係を絶てる気楽な関係というメリットもある。

 心に直接語り掛けることができるSNSでのコミュニケーションは身軽だ。でも、そこに身体が伴うだけで、どうしてこうも困難が伴うのだろう。

 朝鳴の離婚の背景にSNSに頼り過ぎたことがあったように、あまりにも快適になった現代社会は、私たちの日常から面倒なことを奪い、「疲れることはしたくない」思考を育ててしまう部分もある。誰かとちゃんと向き合わなくても、一人でも生きていける。なんでそこまでして、他人とわざわざ心をすり合わさなければならないのか。そんな美々の気持ちも痛いほどわかる。

 「もどかしいというか、面倒くさいというか、でもそれが恋愛だ」と栞&八木原は言った。我孫子の「セフレくん問題」というまたも新種の新しさにドラマがどう決着をつけるのかも気になるところだが、やはり一番気になるのは、そろそろ互いの正体に気づく頃合いだろう草モチと檸檬こと、美々と青林が、どうもどかしく、面倒くさく、現実の世界で恋に落ちていくかということだ。「添えもののキャベツ」は「極上のステーキ」になり得るのか。共感に悶えながら、今日も見守ろう。

※高橋優斗の「高」ははしごだかが正式表記。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住。学生時代の寺山修司研究がきっかけで、休日はテレビドラマに映画、本に溺れ、ライター業に勤しむ。日中は書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜23:00放送
出演:波瑠、松下洸平、間宮祥太朗、川栄李奈、高橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、福地桃子、渡辺大、江口のりこ、及川光博
脚本:水橋文美江
演出:中島悟、丸谷俊平
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/remolove/
公式Twitter:@remolove_NTV
公式Instagram:@remolove_NTV

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