山崎賢人が明かす、映画『劇場』への思い 「皆さんの大切な人を見つめ直すきっかけになれば」

山崎賢人が明かす、映画『劇場』への思い

 又吉直樹の同名小説を行定勲監督が実写化した恋愛映画『劇場』が、7月17日より劇場公開と同時にAmazon Prime Videoにて全世界独占配信されている。本作は、高校からの友人と立ち上げた劇団がうまくいかず、言いようのない孤独を感じている脚本家兼演出家の永田と、女優になる夢を抱き上京し、服飾の学校に通っている学生・沙希の7年におよぶ恋模様を描いた青春映画だ。

 主演を務めたのは、人生初のひげを生やし永田という不器用な青年を演じ切った山崎賢人。劇場公開日となった7月17日、新型コロナウイルスの影響による公開延期を経てついに公開初日を迎えた心境や、行定監督と沙希役の松岡茉優への思い、そしてこの作品を通して感じたことを語ってもらった。

「僕自身が普段感じていることと似ている部分もたくさんあった」

ーーもともと4月17日からの劇場公開が予定されていた本作ですが、新型コロナウイルスの影響で公開が延期となり、今回規模を縮小しての劇場公開、そして全世界独占配信という形で世に放たれることになりました。

山崎賢人(以下、山崎):結果的に3カ月延期になりましたが、この大変な時期の中で無事公開できた喜びがあります。なおかつこの作品には、劇場で観ていただきたい仕掛けがあるので、公開館数は減ってしまったとはいえ、劇場で上映できるようにしてくださった皆さん、そして劇場に足を運んでくださる皆さんには本当に感謝しかありません。そして、配信も同時に行われるということで、新しい時代の到来を感じます。今後こういうかたちが増えていくのかはわかりませんが、作品が広がっていくこと自体はとてもいいことだと思っています。

ーー映画のタイトルも『劇場』ですし、やっぱり劇場で観たい作品だと思います。一方で、配信というかたちで日本以外の国の人にも同時期に観てもらえるというメリットもありますよね。

山崎:そうですよね。本来の映画のリズムみたいなものを崩さずに、より多くの人に観ていただけるということなので、楽しみにしたいと思います。

ーー今回、劇場公開と同時に配信が行われることになった背景には、行定勲監督の強い思いがあったそうですが、そんな行定監督との撮影はいかがでしたか?

山崎:本当にスタッフの皆さんや自分たち役者のことを考えて、寄り添ってくれる監督だなと思います。今回の決断にも監督の愛も感じましたし、この作品も、行定さんが監督を務めたからこそ、映画としていいものになったんじゃないかなと。行定さんは舞台の演出もされているので、僕が演じた脚本家兼演出家の永田に、行定さんもどこか自分を投影するところがあったのかなと思います。行定さんに相談しながらいろんな意見をたくさん取り入れて、永田という役を一緒に作っていけたのが、僕としてはすごく楽しかったですね。

ーービジュアル的なインパクトはもちろん、その役柄や演技も含めて、間違いなく山崎さんの代表作のひとつになると確信しました。

山崎:ここまで人間の愚かな部分や弱い部分を出す役を演じたのが初めてだったので、存分にそういうところを出すことができたなと。初めて原作と脚本を読ませてもらったときに、めちゃめちゃおもしろいなと思ったんです。又吉さんの文章や登場人物たちの会話など、本当に人間味のある人物たちを描いているなという感じがして、そのときから実際に演じてみたいなと思うシーンがいっぱいありました。いままで演じてきたどの役柄よりも、愚かさが一番前面に出ている、“これぞ人間”という役柄なので、本当にこの永田という役を演じることができてよかったです。

ーー“表現者”という部分ではご自身と重なる部分もあったり?

山崎:人と比較されることもそうですし、自分の劇団や演技をどう見せていくかという葛藤、うまくいかない人間関係、はっきりとした正解がないことなど、この仕事をやっている上で僕自身が普段感じていることと似ている部分もたくさんありました。自分でも答えがわからないことがたくさんあるので、その“どうしようもなさ”や“わからない感じ”もどんどん出していきたいなと思っていました。監督が、「嘘がなければどんなふうに終わってもいい」「永田としてそうだと思ったら、その通りにやってくれればいい」と、毎シーン毎カット言ってくださって。それって、役者にとってはすごくやりやすいことなんです。行定さんとの撮影は、本当に楽しくて気持ちよかったですね。

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