山崎賢人、松岡茉優らの“今”が全世界に配信 下北沢が舞台の『劇場』は青春を思い出す一作に

『劇場』で山崎賢人らの魅力が全世界に配信

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、青春時代を下北沢のお寿司屋さんでのバイトに費やした大和田が、本日より劇場公開&Amazon Prime Videoにて全世界独占配信された『劇場』をプッシュします。

『劇場』

 芥川賞作家・又吉直樹の小説『劇場』(新潮社刊)が、『世界の中心で、愛をさけぶ』『ナラタージュ』の行定勲監督によって実写映画化された。

 中学からの友人と立ち上げた劇団「おろか」で脚本家兼演出家を担う永田(山崎賢人)は、演劇に身も心も捧げながら、実生活では社会や周囲の人々とうまく協調できない不器用な青年だ。そんな彼がある日、街で自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡茉優)に声をかける。沙希は、女優になる夢を抱き上京し、服飾の大学に通っている学生だった。

 自転車で2人乗りし、同棲している部屋で仲睦まじく過ごすうちに、演劇の世界により没頭していく永田と、それを支える沙希。そんな2人の、恋をして幸せそうな姿と、その一方で夢を追う中ですれ違っていくやりきれなさが容赦なく描かれていく。

 1年前の昨日(2019年7月16日)に第一報が出され、当時は「山崎賢人」「松岡茉優」「行定勲」「又吉直樹」「劇場」という座組みを見ただけで期待が高まり、待ち遠しくて仕方がなかった。映画を観終えてからは余韻がおさまらず、比べて観てしまうのが嫌で未読だった原作小説に手を出した。行定監督が「私は又吉さんが書いた主人公がまとう空気をどうしても撮りたくなった。ザラザラとした、夜が明ける頃に感じる切なくて淋しい空気を」と制作意思を表明しているとおり、原作と映画を比べてしまう心配はないほど、本を読みながら思い出す2人の姿も風景もぴったりとハマった。

 舞台として映し出されるのは、行定監督が「そこかしこで錆つきそうな青春が吹き溜まっている」として選んだ、下北沢、渋谷、井の頭公園。本作では、恋愛ばかりではなく、永田と沙希、彼らを取り巻く人物たちを通して、夢や挫折も描かれていく。学生時代を下北沢界隈で過ごした筆者にとって、その数々のシーンが思い出深かったのではない。小さくても大きくても、夢か希望か、何かを持って上京した人にとっては、登場人物たちの姿にちょっと自身の経験を重ねる瞬間があるかもしれない。

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