塚原あゆ子が明かす、毎回違う味で作る『MIU404』 テレビドラマの最前線で考えること

塚原あゆ子、ドラマの最前線で考えること

 新型コロナウイルスの影響で、次々と撮影が中断した4月ドラマ。7月に入って順次、放送がスタートしたものの、作品を企画した当初とはあまりにも社会が変わってしまった。誰も経験したことのない大きな変化に、エンターテインメントは何ができるのか。

 今回、金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)で演出を担当している塚原あゆ子に会うことができたのは、7月半ばのこと。『MIU404』の第3話が放送された直後だった。「何とか息をしてる感じ」という彼女が、テレビドラマの最前線で感じている胸の内を明かしてくれた。

わからない日々の中で「張り合い」に

――『MIU404』とても楽しませていただいています。

塚原あゆ子(以下、塚原):ありがとうございます。ドラマを撮り始めたころは、まさかこんな風になるなんて予想していなかったので、何とか息してる感じです。『MIU404』は2話まで撮っていたんですけど、3話を作るときとは世相が全く変わってしまって。どう受け入れられるのか、不安感っていうのかな、わからない感でいっぱいでした。そんな中、リアルサウンドさんの第1話の記事(参考:『MIU404』綾野剛×星野源の正反対バディが愛おしい! 上がりに上がった期待を超える第1話に)に「張り合い」って言葉が書かれていて、ちょっと救われたんですよ。「金曜日まで頑張れる」とか、人としゃべるときのネタとか、そういう「張り合い」になれればいいんだって。新しいものを作っていかなくちゃいけない人間にとって、ブレない指針のようなものってやっぱり必要で。綾野(剛)さん、星野(源)さんとも「そうかそうか」と。受け入れられるかどうかじゃなくて「張り合いになるように元気にやっていく感じがいいね」って、3話を作り出した感じです。

――光栄です。実際に新しいドラマが生み出されない時期を経験してから、ようやく待ち望んでいた『MIU404』がスタートしたとき、すごく贅沢な気持ちになったんです。リアルタイムで作られる物語を楽しみにしながら日々を過ごすのっていいなって。

塚原:同じ瞬間にワーッてライブ感覚で盛り上がって発散できるのは、消費されていくエンタメ=テレビドラマのいいところだと思うんです。

――撮影がストップした間、キャストのみなさんとはどんなお話をされたんですか?

塚原:私たちでさえこんなに閉塞感があるのだから、いわゆる「青春」と呼ばれる短い季節を迎えている人たちのモヤモヤや悔しさはいくばかりかと。じゃあ、自分たちに何ができるのか。エンタメがなくていいとなったら、何が楽しいことなのか。で、考えちゃうぐらいだったら作ればいいねって。私たちは作れるわけだから。できないことじゃなくて、できることを探していこうとしています。一瞬でも、この閉塞感を忘れるようなコンテンツになればいいね、と。

毎回違う味の話が作れるのは『MIU404』ならでは

――第3話では菅田将暉さんや岡崎体育さんのサプライズもありましたね。

塚原:やっぱり、びっくりするとか、沸くとか、そういうちょっとお祭り騒ぎみたいなことをやっていこうって話になったんです。まだ、たくさんの人数で集まれないじゃないですか。そんな今だからこそワイワイできたら、なおのこといいなと思って。

――そうですね、リアルタイムでTwitterとかで繋がって「菅田将暉!」「やられたー」って盛り上がっているのを見て、テレビドラマのパワーを改めて感じました。ゲストの存在を先に告知せず、サプライズにしたのもそういう狙いだったんでしょうか?

塚原:新井順子プロデューサーが「隠そう」と(笑)。このドラマは、原作のないオリジナルなので、そのなかで一番楽しめることをやっていこうとなって。野木(亜紀子)さんの脚本って、犯人探しの本ではないんですよ。『アンナチュラル』(TBS系)の時は、なぜその方が亡くなられたのか。『MIU404』では、なぜその方が犯行に走ったのか。サスペンスなんですけど、人間ドラマが中心になって転がっていくから。例えば『リバース』(TBS系)のときみたいに「犯人はこの人だったのか!」みたいなサプライズはできないんですが、その代わりにみんなが初めて知る驚きとか、話題にしやすいことを提供しようと考えました。

――「やられた」といえば、第1話のアクションシーンも驚きました。テレビドラマであんなに派手なカーチェイスは久しぶりに見ました。

塚原:うれしい。でもね、1話好きな人は、2話好きじゃないと思うのよね。

――たしかに、ガラッと話の雰囲気が毎回変わりますね。

塚原:機捜って、もともと統一感のない仕事なんです。ガサ入れすることもあれば、張り込みもするし、職務質問もする。毎回その日その日で担当する業務が変わるので、刑事と普通の人の中間にいるような顔をしてるんですよね。なので、毎回違う味の話が作れるのは『MIU404』ならでは。アクションをやると決めたら、思い切りアクションやってみる。ロードムービーやると決めたら、その一番おいしいところを出す。第3話みたいに、走るって決めたらとことん青春するみたいなことを毎回やっています。

――彼らも事件を選べないってことですもんね。

塚原:そうなんですよ。それが見づらいと言われると申し訳ないんですけど。毎回「次はどんなお仕事でしょう?」とワクワクしてもらいつつ、菅田さんが出てきた成川の行末、九重の成長、志摩の過去……っていうような、野木さんならではの縦に大きく流れている物語の2本柱を見やすく提供できればと思っています。

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