『ジュラシック・ワールド/炎の王国』新監督がもたらした“新風” ゴシック・ホラーな恐竜パニック

『ジュラシック・ワールド』続編に吹く新風

 7月24日に『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)で『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が地上波初放送される。

 スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』(1993年)は、コンピュータグラフィックスの技術を本格的に導入した最初の実写映画といっても過言ではない。映画作品におけるコンピュータグラフィックスの歴史を辿ると、その最初とされるのはディズニーの実写作品『トロン』(1982年)である。本作は、コンピュータグラフィックス、すなわちCGが全面的に導入された世界初の作品として、映画ファンにはよく知られた存在であるが、その実は、技術的あるいは予算的な兼ね合いから、ほとんどのシーンを手描きアニメーションの合成に頼る代物だった。そのため、『トロン』におけるフルCGシーンは、およそ15分程度のものであり、ある意味では、実写とCGの融和性を検証する、実験映画的な側面も感じられた。

 実写映画におけるCGの技術は、1990年代前半に飛躍的な進化を遂げる。『ジュラシック・パーク』は、CG黎明期に登場した最初の本格的なCG作品であり、“生物”をCGで表現するという革新的な映像美が世界中の人々を魅了した。『ジュラシック・パーク』の凄味はそれだけではない、CGが登場する以前の主流な技術として知られる“アニマトロニクス”も同時に取り入れ、デジタルとアナログの両面を包容するハイブリットな映像技術が高く評価された作品でもあるのだ。それらの映像表現的な“伝統”は最新作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』でも精力的に取り入れられ、CGに適した場面ではCGを、アニマトロニクスに適した場面ではそれを用いて、その都度、見合った技術を活用しているわけだ。

 『ジュラシック・ワールド/炎の王国』の監督は、前作『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレヴォロウに代わり、スペイン出身の映画監督J・A・バヨナがメガホンを取った。2004年のスマトラ島沖地震の際の実話を描いた『インポッシブル』(2012年)では、スペイン政府から映画国民賞を授与され、パトリック・ネスの同名文学に基づく『怪物はささやく』(2016年)では、スペインのゴヤ賞で最多9部門を獲得するなど、スペインを代表する名監督のひとりに数えられる人物だ。彼が『炎の王国』にもたらした“新風”は実にホラーチックなものである。映画前半ではイスラ・ヌブラル島を舞台とし、火山噴火による恐竜たちの存亡の機が描かれるが、映画後半ではそれが一変し、ゴシック風の洋館で繰り広げられる、まさしく恐竜パニックとホラーの融合が展開する。これまでのシリーズでもホラーを意識するシーンは多々あったが、それらとはまた異なる、ゴシック・ホラーなテイストを醸し出しているわけだ。

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