『ジュラシック・ワールド/炎の王国』4DXは映画技術の最高到達点へ 映像と効果が高度に融合
2015年のサマーシーズンに公開された『ジュラシック・ワールド』といえば、当時の全米オープニング新記録を樹立するメガヒットを叩き出し、日本でもその年の年間ベストとなる興行収入95.3億円を記録した。スティーヴン・スピルバーグが手がけた『ジュラシック・パーク』、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』がいまだに語り継がれる名作であるとはいえ、2001年に公開された『ジュラシック・パークIII』は評価が伸び悩み、さらにそこから14年もの時を経て公開された続編が、なぜこれほどまでにヒットしたのか。
それを考えたときに、この『ジュラシック』シリーズという存在自体が映画技術の革新を証明する側面を持ち合わせているとの結論にたどり着く。もちろん、目を見張るような映画技術を還元させた作品というのはこれまでにも数え切れないほどある。しかしVFX時代の黎明期に登場した『ジュラシック・パーク』は先進技術と旧来のアニマトロニクスの技術を掛け合わせた、まさにアイデアの産物。この映画を皮切りに90年代の映画においてVFXが主流となったことは言うまでもなく、その後映画は99年に『マトリックス』というひとつのアンサーに到達した。
それと同様に、2009年にジェームズ・キャメロンの『アバター』によって提示されたのが3D技術を駆使した「体験型」の映画。VFXのさらに先を行く、いわばまったく新しい「映画」の登場を契機に、様々な作品で3Dが制作されるようになり、そこにさらに視覚以外の感覚を加えた4DXが生まれる。その流れで登場した『ジュラシック・ワールド』は、4DXという、現在の映画技術の最高到達点に、いち早く出されたアンサーなのだと感じずにはいられなかった。
ところがそれから3年、『ジュラシック・ワールド』の続編となる『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が公開されることに合わせて、一度出されたアンサーが何倍も高いクオリティをもって上方修正されることになろうとは。25年前に漠然とスクリーンを眺めていた誰もが考えたであろう、恐竜と至近距離で対峙するという夢の体験が、もはや疑似体験を超越したコンディションで現れることになったのだ。
元を辿ってみれば、前作『ジュラシック・ワールド』の触れ込みが「あのテーマパークがついにオープンする」となっていたように、旧3作で起きたあらゆる悲劇やトラブルを経て完成した“ジュラシック・ワールド”を訪れた人々が味わうあらゆる出来事を、観客が追体験することこそが新章の最大のコンセプトであるわけだ。それだけに、テーマパークが崩壊した後を描いた本作であっても、恐竜という映画的に極めて魅力的な存在を軸にして新たな臨場感の要素がふんだんに張り巡らされている以上、その魅力が尽きることは決してない。
冒頭の海底の閉塞感にはじまり、火山の大噴火、クリス・プラット演じるオーウェンやブライス・ダラス・ハワード演じるクレアとともに恐竜の救出に奔走する躍動感、風や雷。そして何よりT-レックスや新種のハイブリッド“インドラプトル”ら恐竜たちの足音や咆哮が生み出す振動を細かなものから大きなものまで余すところなく全身で味わい、彼らが襲いくるという恐怖を骨の髄まで感じる。そこに、シリーズを象徴する“雨”の存在も加わる。
座席の振動や水しぶき、スモークといった効果がスクリーンに映る映像と連動するという4DXのシステムだけを漠然と聞くと、映画を観ながらアトラクションを楽しむという並行的なもののように思えてしまうが、決してそうはならない。とりわけ本作は、メガホンを取るJ・A・バヨナをはじめ作り手側が4DXでの鑑賞を推奨しているように、その2つのアトラクティブな存在が完全に一体化することを前提に作品が作られているのだ。結果として、映像そのものへの没入感を高め、実際に生きている恐竜たちと同じ世界に足を踏み入れたかのような緊張感と興奮を味わえる仕上がりとなった。この4DX体験は、かつてないクオリティだろう。