ポイントは“ムツゴロウ精神”? 『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は挑戦的な作品に

『ジュラシック・ワールド』続編は挑戦的

 「あれだけ人が死んだのに、普通に開園した!?」全世界の人間がそう突っ込んだ『ジュラシック・ワールド』(15年)から早3年。ついに続編『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(18年)が公開された。期待に違わぬ一本だったが、しかし……正直に言うと、個人的に少々困った映画でもあった。ざっくばらんに言うなら、「大いに楽しんだ。面白かった。けれど、どうしても引っかかる所がある」だ。

 遺伝子工学で復活させた恐竜と触れ合うテーマパーク「ジュラシック・パーク」。開園直前に事故が起きて人が死にまくり、その後もあれやこれやあって人死にが続いた。しかし、恐竜という抗いがたい魅力によって、パークはさらにパワーアップした「ジュラシック・ワールド」として復活。世界的な大人気スポットになるも、例によって事故が起こって人が死にまくり。またも閉園してしまった。そんなジュラシック・ワールドが今度は火山の爆発で沈んでしまうという。このまま恐竜を見捨ててはおけないと、前作の主人公コンビ、オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は恐竜保護へ向かうのだが……。

 前半は火山のマグマと恐竜が同時に襲いかかってくるパニック・アクション。監督を務めたJ・A・バヨナは傑作『インポッシブル』(12年)で津波の恐怖を描いた経験があり、ここではディザスター・ムービー監督としての手腕を遺憾なく発揮している。次から次へと襲いかかる危機また危機。全速力で殺しに来る肉食恐竜から、「体の自由が利かない状態のところに、ジワジワとマグマが迫ってくる」と言った大ネタ/小ネタを織り交ぜて、まさに息もつかせない。そして主人公らが「ある光景」を見る哀しくも美しい名シーンを区切りにして、映画のトーンはガラっと変わる。後半からバヨナ監督は、映画そのものを自身の得意ジャンル、すなわちゴシック・ホラーに引きずり込む。『永遠のこどもたち』(07年)を彷彿とさせる舞台を用意し、恐竜との追跡劇を心霊ホラー風に描いてみせる。何せ前半が恐竜大行進&火山大噴火という特盛セットなので、やや地味に見えるのは事実だが、これはこれで恐ろしくスリリング。大いに楽しめた。

 ――と、ここまでは手放しで絶賛しておきながら、一方でどうしても引っかかった点もある。それは主人公たちの行動・思想に共感できなかったからだ。本作は「再生させた恐竜を、再び絶滅から救う」というのがメイン・プロットになっている。しかし、身も蓋もない話になるのだが、私は「火山が爆発するなら、そこはもう自然に任せていいのでは?」と思ってしまった。もちろん主人公たちが恐竜を助けに向かう心理は理解できる(丁寧に描写されてもいる)。前作に登場したラプトルのブルーは、さらに可愛くなっているし、助けたいと思うのも当然だ。しかし――。たとえば我が国でもこんな故事がある。かつてムツゴロウさんはライオンに指を食いちぎられた。私なら生涯ライオンに近づくまいと誓うだろうが、ムツゴロウさんは違った。ライオンを許し、その後も触れ合いを続けている。本作の主人公たちは、こうしたムツゴロウ精神を持っていた。しかし、私はムツゴロウたれなかった。

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