『大恋愛』が描く愛する人の全てを受け入れるということ 戸田恵梨香とムロツヨシの10年間の軌跡

『大恋愛』が描く愛する人の全てを受け入れるということ 戸田恵梨香とムロツヨシの10年間の軌跡

 戸田恵梨香主演ドラマの再放送が相次いでいるが、『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)はそのラインナップの中でも異色、かつ近年の恋愛ドラマの中で異彩を放っている。

 ラブコメが主流で、the王道のラブストーリーがなかなか支持されにくい昨今、恥ずかしいまでのどストレートなタイトル。しかし視聴後には“このタイトルのほか考えられない”と思わされるような納得の純愛物語だ。

 若年性アルツハイマーを患う女医の北澤尚(戸田恵梨香)と、恋人の元小説家・間宮真司(ムロツヨシ)が主人公。この2人の10年間の奇跡を追ったストーリーで、全10話のうち第5話で2人は結婚する。まず10年もの年月を描くドラマ作品が珍しく、多くの場合結婚はクライマックスに用意されている展開だが、物語の折り返し地点にちょうど結婚が位置して、見事に結婚前後が丁寧に綴られている(この最期をごまかさないところも本作の見応えにつながっている)。

 この設定もそうだが、主人公2人にはドラマチックな展開ばかり降りかかる。尚は面倒を避けて合理的に進めた婚約のための引越しで、その引越し業者として往年のファンだった作家・真司とたまたま出会う。そして、結婚相手として申し分ない医師・井原侑市(松岡昌宏)との婚約を破棄。“砂漠を歩いて生きる”ことを選ぶ。

 一方の真司は神社に捨てられていた孤児。21歳の時に出版した処女作が大ヒットとなるも、2作目以降は鳴かず飛ばずの状態。「生きていくために」引越し業者のアルバイトをしていて筆は長らく置いてしまっている。それが尚と出会い、初めて自身の著書『砂にまみれたアンジェリカ』のような本気の恋に落ちるのだ。

 これだけ列挙してみても波乱万丈で、ここにさらに尚の病気の発症まで加わるとあまりの乱高下に視聴者側も食傷気味になりかねないところだ。だが、そこは「ラブストーリーの名手」と名高い脚本家・大石静の完全オリジナル作品だけある。加えてこの2人の名演にかかれば、これらの出来事全てが日常の地続きに見事に配置され、誰もが抱いたことのあるであろう感情に落とし込まれて、共感を持って魅せてくれるのだ。何気ない2人のやり取りがあまりに自然で、アドリブも交えながらの自然体だからこそ、それがシリアスな場面に転用されたときに、観る者の心を引き込んで離さない。

 とんでもなく深刻で重大なシーンにあっても、ムロが演じる真司のひたむきで大きな愛情にかかればそんな問題は「自分が尚ちゃんを想う気持ちに比べれば大したことなんてない」と、全て愛おしさに変換されて飲み干されてしまうのだ。尚が病気を告白したときの真司の全身全霊の回答、「尚ががんでも、エイズでも、アルツハイマーでも、心臓病でも、腎臓病でも、糖尿病でも、中耳炎でも、ものもらいでも水虫でも。俺は尚と一緒にいたいんだ」はそれを象徴している。

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