柄本時生×岡田将生×落合モトキ×賀来賢人がリモート作品『肌の記録』で示した、“新しい演劇のかたち”
柄本時生、岡田将生、落合モトキ、賀来賢人の4人で結成された「劇団年一」による映像作品『肌の記録』が、5月21日(木)まで期間限定で無料配信されている。『平成物語』シリーズ(2018年、2019年/フジテレビ系)や『俺のスカート、どこ行った?』(2019年/日本テレビ系)、『死にたい夜にかぎって』(2020年、MBS・TBS系)などの脚本家である新鋭・加藤拓也を作・演出に迎え、完全リモートで制作された作品だ。
本作の舞台は、これからおおよそ100年後の世界。いつからか仕事や教育は“オールリモート”に移行し、外出は基本的に禁止、人々がオンライン以外で会うことは叶わぬ世の中であり、その関わり方(コミュニケーション法)は、私たちの現在のそれとは異なっている。そんななか、幼なじみで30歳のトキオ(柄本時生)、マサキ(岡田将生)、モトキ(落合モトキ)、ケント(賀来賢人)の4人は、自分たちの“これまで”を振り返る一方で、自分らの知らぬ時代の文化に思いを馳せたりもする……。お話の筋書きとしては、おおむねこのようなものだ。
物語は、狂言回しを務めるトキオの“語り”ともに進行していく。いま隆盛を極めている“Zoom演劇”よろしく画面は分割され、4人それぞれの生活の様子が垣間見られる(=演者たち自身の私生活でもある)。そこで誰かの「◯歳やりまーす!」というかけ声とともに、顔写真を貼った人形を各々が手にし、“6歳”、“11歳”、“15歳”、“18歳”、“20歳”、“23歳”、“24歳”、“30歳”と、4人がそれぞれの年齢を演じていくのだ。ちなみに“15歳”以降は人形ではなく、本人たち自身が“いつかの自分”を演じている。
名実ともにこの世代を牽引する俳優が揃っているものとあって、ただ純粋に、彼ら見たさにここを訪れた方も多いことだろう。なかには、演劇を観たことのない方もいるのではないかと思う。「果たしてこれは演劇なのか?」と問われれば、答えに窮する。しかし、配信されているYouTubeの作品紹介欄には、“ビデオ通話を使った映像のような演劇のような”や、“2週間限定の上演となっております。再生ボタンを押すと、開演です。”と記載されている。「これは演劇である」と宣言はせずとも、「これも演劇かもしれない」とほのめかしているのだ。この時代だからこそ生まれた、新しい演劇のかたちなのだろう。