豪華アクション女優の共演からオンライン交流まで コロナ禍における海外エンタメ業界の試み

 COVID-19によるウイルス禍に対しエンタメ業界がどう向き合っていくかはあまりに大きな問題であり、また進行中です。エンターテインメントの力で人々や社会を励ましたいという気持ちもある一方、エンタメ業界も他の産業と同じように大打撃を受けています。だから“ウイルス禍とエンタメ業界”という切り口だけでも様々なニュースや意見がネットを飛び交います。僕は日ごろアメコミヒーローものやホラー映画のニュースを書いている者ですが、ヒーローやモンスター映画の送り手たちがこのウイルス禍になにをしているのかについて気が付く限りまとめてみました。限られた領域での話ですが、そこからエンタメと人々の関係についてなんらかのヒントを見つけてみたいと思います。

 4月の上旬ごろから大手の映画会社が、オンライン会議用に使えるバーチャル背景(英語ではVirtual Backgroundと言うそうです)用の素材を無料で配布するようになりました。Zoomなどを使用する際、仮想背景を設定するとあたかも自分がワカンダ(ブラックパンサーの故郷)やバットケイブ(バットマンの秘密基地)にいるかのような形で会議に臨むことができます。自宅からこうした会議に参加する時に一番のネックは、自分の部屋が相手に見えてしまうこと。だから、なるべく白い壁がバックになるところにパソコンとか移動するなど、手間がかかったりします。バーチャル背景はこうした問題を解決してくれます。オンライン会議自体、SF映画っぽいので、『スタートレック』や『エイリアン』の宇宙船の中にいるみたいな背景は似合います。

 映画会社がポスターやキャラクターの画像を待ち受け画面などで提供すること自体はよくある話で珍しいことではありませんが、その多くはあくまでも新作のプロモーションのためです。だからタイトル名とか公開日、(c)のクレジットなどが入っています。しかし、今回のバーチャル背景にはこうした宣伝色はない。もちろん映画会社への好意度形成につながるとか、会議の際「この背景はアベンジャーズの基地で……」とか使用者は話のネタに語るでしょうから結果的に広告効果はあるでしょう。けれど、これは素直に映画会社が自分たちの資産を使って少しでも社会に元気を与えたいという意図の方が強いと思います。バーチャル背景は“キャラクターグッズ”の一種とも言えますが、そもそもキャラクターグッズとは“日常生活に素敵なアクセントを与える”ことを目的としているので、その志には十分応えています。この先、テレワークが進むのであれば、そこにエンタメコンテンツがどう関わることができるか(それはかつてのケータイ用のノベルティストラップや着メロのように)という意味でも興味深い事例です。

 こうした社会的危機の時は有名人が呼びかける寄付やチャリティ企画も多くなります。特に、ウイルス禍が引き起こす低所得者の食糧問題をテーマにしたチャリティに参加するスターが多いようですが、ユニークなのは「この活動を支援してくれた(寄付してくれた)人の中から抽選ですごい体験をプレゼント」という打ち出しをしていること。クリス・プラットからは支援者の中から「『ジュラシック・ワールド3』で恐竜に喰われる役で出演」、クリス・エヴァンスからは「『アベンジャーズ』のメンバーと一緒に(ただしオンラインで)一晩ボードゲームを楽しむ権利」、ヒュー・ジャックマンとライアン・レイノルズからは「(ウイルス禍が去ったら)一緒にレモネード・スタンド立ち上げ」をプレゼント。ハリウッド版『とんねるずのハンマープライス』みたいですね。

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